パンクラス取材ノート

 先日、ブログで近藤有己選手の結婚報告を見て驚いたファンは多かったことでしょう。しかも、お相手はパンクラスの元「萌えバイト」こと中嶋明日美さんで二度びっくり。「萌えバイト」さんといえば、パンクラス在籍中はブログ『萌えろいい女』を執筆。佐藤光留選手や北岡悟選手のブログにも頻繁に取り上げられていたアイドル的存在でした。また、大会の日やファンクラブの集いではかいがいしく働く姿が印象的で、いつも笑顔を絶やさない「萌えバイト」さんに癒されたファンも多いことでしょう。
 ところが、昨年6月に突然パンクラスを退職。退職を知らせるブログのエントリーには「ネガティブな辞め方じゃないです。旅の途中。かなぁ」と書かれていました。それから約1年。お2人はどういった経緯で結婚に至ったのでしょうか。また、27日に試合を控え、なぜこのタイミングで発表したのか、近藤選手に訊いてみました。
 「最初は同じ会社の仲間として飯を食いに行ってたんですよ。その時は特に女性として見ていたわけじゃなかったです。でも、いろいろ話すうちに話が合うなぁ、感覚が合うなぁと思い始めて。とにかくすごく気が合って、いつの間にか自然に…という感じでした」と言う近藤選手。何を話してそんなに気が合ったのかちょっと知りたいところですが、それも覚えていないくらいの自然さだったそうです。近藤選手は、試合後のコメントなどで「頭の中で1人ミーティングをします」と話すことがありますが、たとえて言えばこの「1人ミーティング」を2人でやっているような感じだったそうです。
 友達から恋人に変化したのはいつごろからかと質問してみると「先週ぐらいからです(笑)」と照れていましたが、夫人を女性として意識するようになったのは半年くらいしてからだったようです。好きな人ができると友達などに話したくなるもの。いわゆる「恋バナ」は盛り上がるものですが、近藤選手の場合、人に話そうと思うこともありませんでした。それは決して隠していたわけではなく、本当に自然なことだったから。人にわざわざ話そうと思わないくらい当たり前のことだったからでした。

 プロポーズしたのは今年初め。「自分の家にいるとき、結婚しようと言ったと思います。自分の中では自然な流れだったんですけど、指輪とかは全然考えてなかったですねぇ(笑)。まあそこは、あんまり触れずに…(笑)。おいおい考えます」。鈴木みのる選手は『風になれ』の会見で「式はやった方がいいよ!」とアドバイスしていましたが、今のところ披露宴などの予定はなく、夫人も何も言わないそう。これはお互い、そういうことがあまり得意でないから。お2人はこういった感覚もピッタリ合っているようです。
 お互いの家族にも反対は全くありませんでした。以前に一度あいさつしていたこともあり、夫人のご家族もわかっていて、すぐに許しが出たそうです。「僕の人柄ですかね(笑)」と近藤選手は冗談を言って照れましたが、でも、近藤選手のことを知るファンにはうなづける話です。また、格闘家という、ある意味危険な職業に就く人に大切な娘さんを任せるのは、よほど信頼がなければできないことでしょう。「保険の受取人は母から彼女に変えました」と言う近藤選手。こういうところをはじめとして、近藤選手のもつ誠実さが伝わったのではないでしょうか。
 また、近藤選手のご家族にも反対は全くなく、とても喜んでくれたといいます。
 入籍は4月8日。近藤選手のお父様が「この日は大安だから」と選んでくれた日取りでした。発表が10日になったのは、練習で少し疲れていたからだそうです。なんだか近藤選手らしくて、本当にこの結婚が自然なことだったんだという感じがするエピソードです。
 始まったばかりの新生活は快適なようです。「家事もよくやってくれて助かります。これまでは自炊でしたが、今は全て任せています」と話す近藤選手の表情は、とても穏やかで落ち着いていました。

 それにしても、27日のディファ有明大会を目前に控え、なぜこのタイミングでの結婚・発表だったのでしょうか。対戦相手のKEI山宮選手は「試合の前に結婚を発表だなんて、なんだか不気味だ」と言っていましたが…。しかし、近藤選手は「うーん、特に何も考えてなかったですね」とあくまで自然体。「試合とか関係ないです。試合の作戦に結婚まで使わないですよ(笑)。結婚は自分の中の自然な流れで決めたことです。発表したのは、籍を入れたので早く伝えておこうと思って」と、これ以上ないほど近藤選手らしい答えが返ってきました。
 ブログで夫人の名前を明かしているのは「格闘技関係者はもちろん、ファンの人も彼女がパンクラスにいたことを知っていますから。それに、誰と結婚したのか分からないより、ちゃんと言った方が堂々としていられますし」と言う近藤選手。格闘技界は芸能界とは違うけれど、人の前に出る職業であり、人気商売的な側面は否めない世界です。でも、これだけはっきり発表すれば、確かにやましいところも詮索されることもありません。夫人への愛情と誠実さがにじみ出る言葉で、結婚しても女子ファンは減るどころか増えるかも!?
 鈴木選手は「ismは30過ぎてもフラフラしている奴が多いから、近藤にはみんなのいいお手本になってほしいね」と語っていましたが、きっとそうなるのではないでしょうか。

パンクラス取材ノート
 さて、山宮選手が昨年12月の川村亮戦後、近藤選手を指名。呼びかけに応えた近藤選手がリングに上がったシーンは、まだ記憶に新しいところです。その時の気持ちを聞いてみると、近藤選手は「うーん、特に何も考えてなかったですけど、呼ばれたから上がったというか(笑)」と、またまた“らしい”答え。でも、「自分との試合に思い入れがあるんだと、すごく感じました。素直に嬉しかったですね」と、山宮の並々ならぬ思いをしっかりと受け止めていました。
 あれから4ヵ月。27日にはいよいよ山宮選手との試合が行なわれます。
近藤選手は「山宮とは、ほとんど同期といっていいくらいで(近藤選手=96年1月、山宮選手=同年7月デビュー)、切磋琢磨してきました。それだけに彼には負けたくない」と言います。
 山宮選手も「近藤有己の恐ろしさはよくわかっている。にこやかに握手してくれたのも逆に怖い」とコメントしていますが、近藤選手は「それは考え過ぎじゃないですかね(笑)」。
 「怖いと言っているのは彼のリズムで、そういうことを言う時ほどいい状態。きっとコンディションもいいだろうし、モチベーションも高いだろうと思います。川村戦の山宮は、昔の山宮とは違って顔に自信が出ていました。昔は自分に有利な場面になってもオドオドしているようなイメージがありましたが、川村戦を見て、もう自分の知っている山宮ではないと感じました。山宮が移籍してもう3年。修羅場もくぐってきています。これまでの山宮だと思って対峙したら飲み込まれると思います」。
 試合については「打撃戦になると思います」と、打撃に重点を置いた練習をしているそうです。「山宮はレスリングが強いので、組み合ったら分が悪い。厳しい闘いになるでしょう。でも、これを乗り越えれば、精神的に得るものは大きいと思います」と表情を引き締めました。

 結婚後初の試合となりますが、結婚は闘いに影響してくるのでしょうか。近藤選手は「頑張ろうとは思いますが、だからと言っていいところを見せようとか、結果に結びつけようとかいう気持ちはありません」と、あくまで私生活は私生活、試合は試合という考えです。
 でも、結婚がいい影響を与えていることは、その表情からも伝わってきました。「試合のことは本当に何も考えていません。いつもより考えていないくらいかも。(夫人とも)格闘技のことは話さないですね」。
 夫人もかつて同じ世界にいた人。現在は旦那さまの仕事なのですから、試合が気にならないはずはありません。でもそれだけに、敢えてこんなふうに切り換えができる環境を作られているのでしょう。いや、これも、作っているのではなく、ごく自然にそうなっているのかも知れませんね。
 また、昨年、ジョシュ・バーネットのもとで練習や試合をしたことも、近藤選手にとってとても良い経験になったようです。今年からパンクラス公認インストラクターにもなったジョシュは本当に先生のようで、技術やトレーニングの方法などいろいろなことを学んだといいます。特に瞬発系のトレーニングは帰国してからも続けており、試合にも生かされてくることが期待できそうです。
 最近の近藤選手は、不動心を越えて「無心」に近くなっているような気がしますが、結婚、そして良い練習ができていることが、近藤選手をより穏やかな表情にさせているのでしょう。「支えてくれる存在ができた分、コンディションも精神面も良くなってくるかなと思います。いい試合をして勝ちたいですね」と、地味にノロけつつ勝利を誓った近藤選手。きっと27日は、パンクラスのエースとしてファンを熱くさせてくれることでしょう。

(安田拡了事務所・佐佐木 澪)