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コロシアム2000 (2000.5.26東京ドーム)
船木誠勝選手コメント全文
■ 船木誠勝:どうもありがとうございました。15年間、いい思いして、いろんなことが思い出されましたね、今日はほんとに。リングの上から、闘っている最中に藤波さんとか、藤原さんとか、橋本選手の顔も見えたし。何よりもファンの人達がすごくあたたかかったっていうのが、嬉しかったですね。あとは、控え室に帰って、選手のみんなとまた一致団結できたってことも、すごく嬉しいです。
ヒクソン選手に関しては、「強い」選手です。ただ、この先何回かいろんな選手と彼が闘っていく上では、苦戦することもあるし、いずれは敗北するときが来ると思います。ただ、自分で言うのもなんですけど、40歳を超えていて、あそこまで集中力があるという人はなかなかいないと思いますんで、そういう意味では、彼は「最強級」の選手のうちの一人だと思います。
自分はもう31歳で、どっかで昔から「ずるずるとやりたくないな」って気持ちがありましたんで、格闘技っていう特殊な世界は、若くてイキのいいときに何かしら結果を出しておかなければならない世界だと自分は思いますんで、40・50歳とかずるずるとひきずりたくないなという思いがありました。で、去年おととしぐらいからずっと何か一つ結果出したいなとずっと思いながら、試合をパンクラスで続けてきたんですけど、そこで、桜庭選手と試合が騒がれたりだとか、あとは小川選手がパンクラスでやりたいとか会社を通してお話したりとかして、いろんな「自分の力を試したい」という人がいた中で、丁度去年の11月ぐらいにヒクソン選手が自分を指名してくれたということで、30歳になって丁度ひと区切り、格闘技やっていく中で何か一つ残せるなというそういう感触がありましたんで、そこで完全燃焼、自分の力を全部、今もっている力を全部かけたいと思いました。ただ、格闘技っていうのはやっぱり勝負は一回だけにしたいんで、もうホントに2回3回っていうのは、こと格闘技に関してはないと自分は思ってますんで、今日はもう、「負け」という結果に関しては納得しています。もうやりのこしたこともないし、自分でやった練習の成果と今日のコンディションと、あとはリング上のヒクソンとの攻防のやりとりの中で、途中で足を痛めたりだとか、顔切ったりだとか、そういうことの最後の終末が「失神」という結果だったということで。失神したら終わりですから。潔く足を洗う決心をしました。
: それは引退表明ということですか?
■ 船木誠勝:はい、そうです。これからはパンクラスを下から支えていきたいと思います。今日の近藤選手を見てもらえばわかるように、パンクラスは決して弱い団体じゃないですから。結果、おれは今日のメインで負けましたけれども、第1試合で近藤が22秒っていう時間で、しかもヒクソンの一番弟子を倒したっていう結果がありますんで。パンクラスを世界の最強の団体の中の一つにしたいと思います。
: 船木選手が引退することでパンクラスに影響がでるのではないか?
■ 船木誠勝:出ると思います。多少は出ますけれども、それも試練だと思います。いつまでも自分がやってられないですから。自分が去ることによってやっぱりチャンスがやってきますから。そういった意味で、この「座」は次に誰が座ってもいいんですよ。実力で取る「座」なんで。そういう意味では、誰でも。今、一番強いやつ、人気のあるやつ、誰でもいいんですよ。今一つ空きましたんで。座ってほしいですね。
: パンクラスの試合で引退する気は?
■ 船木誠勝:ないですね。それはみっともないですね、もう。ここまで来て。他流試合で負けて、また引退試合っていうのは、自分の中ではないです。自分は、今日の試合、パンクラスを背負って出てきましたんで。もう、2度とないですそれ(パンクラスでの試合)は。
: 負けたら引退しようと思っていた?
■ 船木誠勝:そうですね。これで、40歳のヒクソン選手…40歳の選手に挑んで、どういうカタチにしろ、「負け」っていうのを全然考えてなかったんですよ。人に聞いても「負ける要素はない」って言うんで、それを信じてずっと闘ってきたんですけど、やっぱり現実っていうのは甘くないですね。何がどこでどういう風に転がって運がどういう風に転がるかわかんないんで。そういう意味では、帰りのドームの花道でファンの顔見れなかったですね。あんだけ期待して受け入れてもらって。「すいませんでした」っていうのも言えないですから。「すいませんでした」じゃないんですよ、ほんとに。もう、取り返しのつかないことをやってしまったと思いますんで。もう、単に自分の力が足りなかったというだけで、あとはもう「引く」ってことだけですね。もう、リングの上で試合はしないということです。それほど特別な人間じゃないですよ、自分は。
: 「格闘技」での「敗北」とはそこまで責任を負わなければならないものなのでしょうか?
■ 船木誠勝:そうですね。これが「格闘技」です。今日の試合が「格闘技」です。「スポーツ」ではないんですよ。レフェリーストップもドクターストップもない世界なんで。最後首絞められたときに、「逆十字に来るな」と思って腕に意識していたら、そのまま首に来て、首にかかっている腕を引っ張ろうとしたんですけど、そのときにはもうすごい力でしたね。もう「あれで極めよう」という考えが働いていたと思うんですけれど。「ああ、オレ死ぬんだな」と思いましたね、正直。タオル、ホントは今日用意してたんですよ。怖いですから、もしも事故があったら困りますから。バックの中にタオル用意してきたんですけど、だけど、ここでもしオレが高橋に「もし何かあったらタオル投げて」って言ったら、自分で自分に「もしかしたら負けるのかな」という気持ちがあるのかなと思ったんで、近藤にも高橋にもタオル渡してないです。だから、最後に絞められたときには「オレ死ぬんだな」って。だんだん(音が)聞こえなくなって、目の前も白くなってきたんで、で気づいたら周りにいっぱい人が集まってきて、立ってるんですけれども。もう、やっぱり「生きててよかったな」って思いましたね。
: 「死んだ」って思った?
■ 船木誠勝:そうですね。レフェリーが止めていなければ、たぶんヒクソンはそのまま絞めつづけていたと思うんで。医学的に5分締め続けると死ぬらしいんですよ。命拾いしましたよね。そういった意味では「格闘技」っていうのは、もう負けたら「死」なんですよね。スポーツじゃないんですよ。まずその「格闘技」の頂点に立たなければ、格闘技をスポーツに変えられないと思うし。自分とか鈴木とか、高橋とか冨宅とか、同年代の選手は正直言っていろんなところに「傷」があります。だから、それを変えるというのは正直難しいんですが、それよりも若い選手、25・26・27歳以下の選手はまだまだピンピンしてますんで、そういった選手でまず格闘技を飲みこんでいきたいと思いますね。一層努力して。で、「格闘技」を「スポーツ」に変えていきたいですね。
: 今日の試合は船木さんが「スポーツ」に変えたかった?
■ 船木誠勝:変えたかったですね。でも、勝利をおさめてからじゃないと説得力ないですから。そういう意味ではまだ「格闘技」のほうが強かったですね。
: 試合中に勝てると思ったことは?
■ 船木誠勝:ヒクソンが下になったときに、「こりゃいけるな」と悪魔のささやきがあって。上からビシビシ蹴ってるんですけど、そのときにもヒクソンがこちらの足(右足)を蹴ってくるんですよ。で、ぐにょぐにょ関節が動いているのがわかるんですよ。「あれ、これちょっとおかしいな、踏ん張り利かないな」と思って。それで次に組まれたときに、立ったときに一発(パンチが)入ったと思うんですけど、そのとき瞬間にタックルにこられて、足ふんばろうとした瞬間に、足が利かなくなってて、マウントとられてしまいましたね。それで、マウントとられたときにはじめて「ヒクソン・グレイシー」っていう人を認識しましたね。マウントとられた時に「ああ、これがヒクソン・グレイシーか」と。ものすごい巧さがありますね。ポイントポイントで攻めるところを知っているという。ただ、負けて言うのもなんですけど、このまま試合を続けていけばヒクソンに勝つ選手も出てくることは今日実際リングでやっていてわかりました。だけど、40歳超えて、20代の選手とやって負けたとしても、ヒクソンってすごいと思うんですよ。まぁ、いろんな事がありますけども。
: ルール問題での不満は?
■ 船木誠勝:ないです。逆にいえば、ヒクソンが「格闘技」の中での頭突きとか肘打ちとかを削除して試合をしてるっていうのは、どっかしら「スポーツ」的なものがあるんじゃないかなと思うんですけども。そういった意味では、ヒクソンも「格闘技」を「スポーツ」として認めてもらいたいという気持ちを持ちながら、試合をしてるんじゃないかなと思いますね。ただ、初期のUFCにホイスが出てきたときのような、いやらしさっていうのは感じなかったですね。やっぱり正々堂々と闘うタイプだなと思いましたね。
: 引退する事に未練はないか?
■ 船木誠勝:全然ありません。もう充分いろんな経験しましたんで。
: ファンからの声があっても変わらない?
■ 船木誠勝:そうですね。ずいぶんいろんな人に助けられてきたし、自分でもいろんな人に夢を提供してきた自負があるんで。今日、オレは死ぬつもりでやってきたんで。命(を賭けるのは)一回でいいんじゃないですか?もう2度3度やる必要はないと思いますね。
: 入場時のコスチュームは決意のあらわれだった?
■ 船木誠勝:ちょっと物騒な話なんですけど、どっちかが「死ぬ」闘いじゃないですか。レフェリーストップがないっていう。だから、オレ死ぬのやだったんですよ、ものすごく。臆病な話なんですけど。だから、日本刀もって、絶対自分が勝つ自信はありましたけれども、もしも負けるとしたらチョークしかないわけですよ。そうしたら死ぬんだなぁと思うと、ものすごく命が惜しくなったんですよね。だから、一瞬ですね、ちょうど一ヶ月半ぐらい前、合宿終わって一段落ついた後に、なんかちょっと弱気な自分が出てきて。このさいだから日本刀でヒクソンぶった切ってやろうかなと思いましたね。でも、それをやってしまったら、結局バスジャックだとか人刺すとか、そんなのと変わらない人間になってしまうわけじゃないですか。やっぱりみんな自分とヒクソンの闘いを見に来てくれるファンとかも、裏切ると思うし。あとはパンクラスの選手とか、自分を応援してくれる人達すべてを裏切ることになるんで、親戚とか家族とか、そういった意味でもうそういうことは考えない(と決めた)。でも、それぐらい追い込まれていたことは事実ですね。自信とは裏腹に不安も同居してました。そのぐらい極端に、練習がうまくいった日はすごい強気なんだけれども、ちょっとでも練習がまずいときはなんかもう、こうなったら死にたくないから、ヒクソンが入場してきたときに日本刀でスパッとやっちゃおうと、試合不成立にしてもいい、それだけ怖いんだから、もう多少牢屋に入ってもいい、それぐらいの覚悟はありましたね。そんな変な考えを起こすぐらい追い込まれたことは事実です。だけど、それをやったらもう誰もつきあってくれないと思いますから。変人扱いされるとは思いますけど。だから、自分を信じて勝利を信じて闘おうって決めました。どんだけ「強い」とか「勝てる」って言われても、不安ですよ。それはみんないっしょだと思います。ヒクソンだっていっしょだと思います。オレはやっぱり自分でそのとき「ああ、オレ人間だな」と思いましたね。
…ようやく長い闘いが終わりました。「格闘技」に答えはありませんでしたね。永遠に闘い続けることになると思います。
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