まずは記憶にも新しい5月18日横浜大会でのvs砂辺光久戦を振り返っていただきたいのですが、勝ったのにもかかわらず、試合後リングの上ではあまり嬉しそうではなかったですね。
前田吉朗:判定勝ちですからね・・・結構極めれる場面あったじゃないですか?それで極めれなかったんで、なんか・・・でもハナっから極める、完全勝利っていうんですかね?KOとか。それをして当た前って思ってたんで、一本勝ちするのは当然だと思ってたんで。みんなは砂辺選手が強いって言ってましたけど、なんぼ強いっていっても体重差がありましたから。あとなんか、なんて言うんですかね、グラウンドパンチをあんまり強くもらったりとかっていう経験がなかったんで、それでこういう練習をやらなあかんなって思いましたね。この顔(の傷)もグラウンドパンチですよ(笑)鼻とかに的確に当たるんで、意外と効くなって思いましたね。

試合前は砂辺選手がフェザー級の第一人者というイメージがあると言われてましたが。
前田吉朗:イメージはありましたね。

その砂辺選手に勝ったことで、今度は前田選手がまわりからマークされる立場になりますが。
前田吉朗:あんまり意識しないですからね。意識しないというよりもみんなキャリアがある選手じゃないですからね。まだランキングもできてないんで、基準もないんで、別に意識しないですね。

P'sLAB大阪の所属ということで、パンクラスゲートは梅田ステラホール大会、パンクラスデビューはグランキューブ大阪と大阪での出場でした。今回は菊田vs近藤戦というパンクラスの切り札カードがメインに組まれた横浜文化体育館大会での出場でしたが。
前田吉朗:この大会で組まれたっていうことより、その試合(菊田vs近藤戦)を間近で観れたっていうのが嬉しかったですね。やっぱり自分の試合が大事なんですけど、結局自分が勝つなり負けるなりあって、終わったら一段落するじゃないですか?一段落して普通にファンとして観れるっていうのが良かったですね。

では、稲垣組についてお聞きします。この間の「JTC関西大会」をみて人数が増えてるなって思ったんですが、前回のインタビューでは「稲垣組は俺だけだ」って言ってませんでした?
前田吉朗:僕もようわかんないんですけどねぇ(笑)本人の意識だと思うんですよ・・・なんで他の奴が名乗ってるのか知らないですけど。

言い出しっぺは前田選手ですよね?この前も試合後の撮影でスパッツに入った「稲垣組」の文字をアピールしてましたけど、「稲垣組」を名乗ってることについて稲垣選手はどう言ってますか?
前田吉朗:何ひとつ言わないですね。僕それに関して話すんが怖くて、稲垣さんの前では「稲垣組」を口に出さないですからね(笑)

スパッツに稲垣組と入ったのも、所属名が「P'sLAB大阪稲垣組」になったのも、二人の中では・・
前田吉朗:全くないですね会話が(笑)どっちも切り出さないですね(笑)言い出したんがいつやったかな?あっ、あれですよ、去年のJTCの関西予選の時の試合後に「お前ら、稲垣組なめんなよっ!」って言ったんですよ。そっからですね。「あっ、俺の所属名これやっ!」って思ったんですよ(笑)その時にそれを言った後に稲垣さんの反応が怖くて、そのままリングを降りて逃げるようにササッと行っちゃいましたから(笑)

その後は何も言われなかったんですか?
前田吉朗:うーん、なんか話してて稲垣さんの前で、「稲垣組」って言葉が出た時に、「実際そんな組はないからね」って言われたような気もしますね(笑)あんまり深く追求されたりとかはないですね。

6月22日梅田ステラホール大会の出場が決まりましたが、前回の試合から1ヶ月じゃないですか。でも稲垣選手の引退興行にはやっぱり出たいと?
前田吉朗:出たかったですね。出ないとダメですね、やっぱり。

たとえ5月大会で負けてたとしても出たかったですか?
前田吉朗:負けたらさすがに言えないじゃないですか、出してくれって。「弱い奴が何言おんや」って言われたらそれで終わりですから。それは稲垣さんに言われたんですよ。「これに勝たなかったな何も言う権利はない」って。それもあったんで、絶対勝たないかんていうのがありましたね。

対戦相手がP'sLAB東京の佐藤伸哉選手に決定しました。無差別級での試合となります。
前田吉朗:無差別級ですね(笑)別にサトシンさんを舐めてるわけでもないですけど、別に勝てない相手でもないこともない・・・厳しいかな・・・やってみんと、そんなのわからんですからね。普通に練習でやったら強いと思うんですよ。絶対勝てんと思うんすよ。でも試合になったらいろんな要素がかんできますからね。あとまあ無差別級を経験できるんも、なかなかないっすから。稲垣さんもそういうスタイルでやってきたじゃないですか。まあその遺伝子を引き継ぐ者としてはそういう試合を経験するのもありかなっと。まあそれは、ぶっちゃけ後付け的なものもありますけど、とりあえず出たいっていうのがありますからね。稲垣さんとおんなじリングに僕まだ立ってないんですよね。僕がゲートに出るときにちょうど稲垣さんが出る予定だったんですけど、怪我で欠場されたんで・・・稲垣さんがリングに上がるのがこれで最後やと思ったら、まあちょっとやそっと無理してでも、体重が5kg・10kg重いぐらいだったら、死ぬこともないやろうし・・・なんて言うんですかね、稲垣さんがリングに上がるまでに、会場の雰囲気をよくしときたいじゃないですか。僕が出てもそんな何が変わるわけでもないですけど(笑)

佐藤伸哉選手にはどんな印象がありますか。一緒に練習されたことはあるんですか。
前田吉朗:ないですね。JTCの時にセコンドに付いてもらったぐらいですね。試合も観たことないですし。

対戦相手の研究はされるんですか。
前田吉朗:あんまりしないですね。どっち構えぐらいですね、あんまり研究するといろいろ考えちゃいますからね。まあ資料があったら観ますけど。

当日は稲垣選手の最後の試合がありますが、当日は稲垣選手の何に注目されますか。
前田吉朗:そうですね・・・技術とかそういうんじゃないですね。勝った負けたでもないですし。稲垣さんの雰囲気ですかね?なんて言うんですかね、ひとそれぞれのスタイルとかってあるじゃないですか?試合に行く時の心構えとか振る舞いとか、全部通してそれって口で言って教えるもんじゃないじゃないですか?ある程度私生活とか普段の練習とかみて、その人の感性で受けとめていくじゃないですか?こういう時はこうやったらカッコええんやとか吸収していくじゃないですか。僕そういうんを観れたらええなと思いますね。

前田選手にとって稲垣選手は一言でいうとどういう存在なんですか。
前田吉朗:格闘技に関しては親ですよね。稲垣さんがいなかったら僕がこうやってリングに上がってることもないし、格闘技を続けてるかどうかも謎ですよね(笑)稲垣さんの試合とかを観てカッコいいって思って、練習とかしっかりみてもらって、勝てるとこまで自分を伸ばしてもらって、出て勝ったじゃないですか。その気持ちよさとかを覚えてそれで続けられたっていうのがありますね。

稲垣選手に怒られたりはしますか?
前田吉朗:一番怒られたのは一番最初ですかね。昼間(パンクラス大阪)の練習に呼んでもらって、その時がスパーリング初めてしたとかそのぐらいの時ですよ。僕ともう一人が呼んでもらって。でやってて、「なんやーこれ」って、「格闘技ってこんなきついんか」って、頭の中で舐めてたっていうか俺でも出来るわみたいに思ってたんですけど、でもいざプロとやったら「なんじゃーこれー」って言うぐらいキツイんですよ、何もできんし。で、練習が終わって「あー疲れた。やっと終わった」って思うじゃないですか。で掃除してたんですよ。僕がしんどそうにやってたら、稲垣さんに怒られたんですよ。「そんなんやったらやって欲しくないし、せんでええ」っていうふうに。で、僕的には普通にやってるつもりやったんで、そん時は「なんでこんなん言われなアカンねん」って反発心が生まれたんですよ(笑)で、「もう稲垣さん嫌いやー」とかって思ったんですよ(笑)「俺はあんだけボコボコにされて、しかも掃除を普通にやってんのに何でイチャモンつけられなあかんのやろ?」ってまあそれですかね、一番怒られたのは。で、その時に「人間ってのは、一瞬しか、特にこういう世界って一瞬しか会わへん人とかって多いじゃないですか?そういう人に悪い印象を与えて、悪い印象というかダメな奴やと思われたら一生お前が損するぞ」って言われて、ちゃんとするとこはちゃんとしてみたいなことを言われて。そん時僕はまだ若いって言ったら変なんですけど、「そんなん俺はどっちでもええんや」みたいな(笑)今思えば凄いためになることを言ってもらったんですけど、その時の僕は解れなかったんですよね、稲垣さんの言ってることが。ほんで、グレたんですよ、反抗期があったんですよ(笑)今思い出しても恥ずかしいあれなんですけど、反抗期があったんですよ(笑)

どんな反抗をしてたんですか?
前田吉朗:ささやかな反抗ですね(笑)練習は普通に行くんですよ。でも口もきかないし、練習終わったら普段やったらスパーリングとかみんなしてるんですけど、プイって帰ってしまうんですよ。昼間の練習も行かなかったですし。でもある日、稲垣さんが「スパーリングするか?」って声かけてくれたんで、それで僕も「あーやります」とかって言えたんで。あそこで稲垣さんが声かけてくれてなかったら、終わってたかもしれないですね。もう一人一緒に練習してた奴がいて、そいつは経験者で出来る奴やったんで、どうせ俺なんかっていじけてた部分もあったと思うんですよね。ほんとガキでしたね(笑)

逆に一番誉められたのは?
前田吉朗:うーん・・・あんまり印象にないですね(笑)

試合に勝った時はどうなんですか?2月大会の後とかは。
前田吉朗:なんかあれなんですけど、試合終わって「イエーイ」とかって浮かれてたじゃないですか?それで(花道から)稲垣さんに連れて帰られてそれっきりだったんですよ(笑)多分「お疲れ」とかあったような気もするんですけど、舞い上がりすぎて覚えてないんですよ(笑)

では、誉められた記憶はあまりないと(笑)
前田吉朗:そうですね(笑)

今後P'sLAB大阪の選手は皆「稲垣組」を名乗るんですか?
前田吉朗:別に強制をしてるわけじゃないですけど、今の大阪の状態で稲垣組を名乗らない奴で上がってくる奴はいないと思うんですよ。上がってくる奴っていうのは、稲垣さんにきっちりみてもらうか、僕等とずっと練習してるからですから。そうなると上がってくる奴っていうのは、どっかで稲垣さん冨宅さんの二人に絶対世話になるんですよ。その世話になったのがわからん奴っていうのは、練習しても練習相手がいなくなるじゃないですか?そうなったら上がってこれないじゃないですか?ていうふうになってくると思うんですよ。別に名乗るのは、強制じゃないですし、世話になった気持ちがあればいいわけですから。むしろ僕としては軽々しくは名乗って欲しくないっていうのもありますし。

では、試合に向けての意気込みを。
前田吉朗:じゃ、勝ちま・・・。

「勝ちま」でとめますか(笑)
前田吉朗:はい、勝ちま・・・。まあこんなとこで躓いてられないですから。勝たんことには先が見えないですから。たとえ無差別でも。

どうします?ファンに向けてのメッセージですが、今回もないですか。
前田吉朗:ないっすね。ファンがいないっすからね。

でもこのまま勝っていけば、専門誌から取材の話がくるかもしれないですよ。
前田吉朗:ほんまですかっ?ファンレター来ますかね(笑)基本的にみんなもらってるもんですよね?

みんながみんなじゃないと思いますけど。
前田吉朗:ファンレター欲しいなぁ。来ないですかねぇー(笑)

じゃ、ファンへのメッセージとしてファンレターをくれと!
前田吉朗:いや、やっぱりいらないです(笑)とにかく地元なんで盛り上げれればいいです。



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