10月4日(土)グランキューブ大阪大会で、総合格闘技道場コブラ会の花澤大介13選手との対戦が決定しました。今回の試合は、昨年11月・横浜大会でのVS和田拓也(SKアブソリュート)戦以来、11ヶ月ぶりの試合、またケガからの復帰戦となりますが、先ずはその前回の試合となるVS和田戦に関して少しだけお話をうかがいたいと思います。VS和田戦は、和田選手が修斗を離れてからの第1戦だったわけですけど、それは意識してました?
伊藤崇文:してましたよ。修斗を離れてようと、誰もが元・修斗って見るだろうし、しかも離れてから1戦目っていうことだったから、みんな元・修斗って見るじゃないですか。いや、もう全然。これもオイしかったです。オイシイって思いましたね。相手的には。でも和田選手に勝ったからってこれで大きく息ができたわけじゃないし。「パンクラスVS修斗」って見てもらっても良かったし。修斗っていう母体が大きいし、認知されてるし、総合の老舗っていうところがあるから、和田選手のようにそこを離れてもやっぱり元・修斗っていうふうに見られるんじゃないですか。まぁ、だから僕も勝手にそう思ったし、お客さんもそっちの方が観やすいと思ったし。僕もそっちの方がテンション上がりやすくなるし。別に和田選手じゃなくても良かった。元・修斗でも、とにかく「修斗」っていう言葉がつけば、VS個人っていうより、VS修斗ってことで良かったんです。その時は。

その和田選手との試合で勝利したものの腕を負傷し、その後残念ながら戦線離脱ということになってしまいました。そして今年5月の横浜大会で、復帰戦として花澤大介選手(当時)との対戦が一度は決定しましたが、その復帰戦を前に不運にも再度のケガでまたも戦線離脱。涙を飲んだ5月から現在までの約4ヶ月の間、伊藤選手が懸命にケガの回復に努めている傍ら、パンクラスの内外ではいろいろな事が起こりました。パンクラス史上に残る名勝負と言われた、5/18横浜大会での菊田VS近藤戦。鈴木選手の新日本プロレス出場。稲垣克臣選手の引退。ネオブラッド・トーナメントでのパンクラスism若手選手の1回戦敗退。伊藤選手と同期・同年代の國奥、渋谷、近藤、3選手の、10周年記念興行での活躍など。そういう出来事をパンクラスの中から見ていた伊藤選手の気持ちっていうのはどういうものだったのでしょう?
伊藤崇文:先ずは悔しいっていうのが一番ですね。試合に出れてないわけじゃないですか。まぁ、10周年の大会は出場できなかった選手の方が多いんですけど、僕はこれまでの試合結果からの選考洩れではないと思うんです。そういうのが悔しいんですよね。「一体オレ、何してんのやろな?」って。10周年記念大会っていう大きな興行じゃないですか。だから白星優先とかで選ばれるのは当然だと思うんですよ。でも、僕の意見からすれば、土下座までして、(生え抜き)第1号に選ばれたオレが何で出てないんやろなっていう、そういう悔しさですよね。やっぱり。オレが1番に出るべきやろなって思いますよね。みんなが活躍してるのは良いことなんですけどね・・・。まぁ、来年が僕の10周年ですから(伊藤選手のパンクラス入門は1994年5月。来年5月で満10年)、その時に全部、そういう仕返しを全部していこうかなって思ってます。僕は出れなくて悔しい思いをして、まぁ、いろんな思いをした選手がいっぱいいると思うんですけど、お互い試合しながら僕の方がすごい目立って、お互い試合してどちらもケガもなく、そういう中ですごい目立ってオイシイところを持っていって、逆に悔しい気持ちにさせていこうかなっていう、伊藤崇文 10周年YEARにしたいですね。いや、もうとにかく悔しいですよ。そういうのは。それ以外に何もないっスね。言葉は。感情は。

1つ1つお聞きしてもいいですか? まずは近藤選手に関してなんですけど、生え抜き第1号として1995年にデビューして、7月の第1回ネオブラッド・トーナメントでも優勝して、フランク・シャムロックの対戦(9月・日本武道館)では“天才対決”とまで称された伊藤選手をそのデビュー戦で破り、衝撃のプロデビューから現在までずっと突っ走ってきたといってもいいと思える近藤選手なんですが、その近藤選手を伊藤選手はどうご覧になってらっしゃるのか?
伊藤崇文:いや、純粋に強いなって思いますね。やっぱり船木さん、鈴木さんに勝ってるのは大きいですよね。いろんな意味で。でも僕なんかもっと違うやり方がすごいあると思うので・・・。いや、全然悔しいですけどね。でも僕にはもっと全然やり方があると思うし、近藤有己という個性を越えるものを僕は持ってると思うから。だから焦りはありますけど、勝てると思ってます。

それはもちろん“プロ”として?
伊藤崇文:プロとしてです。結果的に大きく見てプロとしてでないと。勝負してるのはそこなんで、僕は。

では、次にMISSIONに籍を移して、新日本プロレスという新たな活躍の舞台を見つけた鈴木選手なんですけど、その鈴木選手をどうご覧になってらっしゃるのか?
伊藤崇文:基本的にはプロとして負けたくはないんですよね。活躍の場があるとか、見つけるとかいうのは、そういうのは僕はセンスだと思いますから。プロレスもできる、総合もできる、特に鈴木さんってプロレス向きだと思うし、パンクラスのリングで試合する時も、新日本に上がる時も、どの雑誌にも書かれると思うんですけど、鈴木みのるっていう個性がどこでも出てる、どのリングでも同じだと思うので。僕、そういうのに負けたくないですよね。MISSIONとかいっても、おいしいのはやっぱり鈴木さんだと思うので。やっぱり自分自身が。だから絶対こんなのは一個人の闘いなんで。そんなオイシイ思いをしている鈴木さんには負けたくないんで。ネームバリューとか全て含めて、それもプロとして。もう、そうなったら先輩後輩とか関係ないですね。存在感とか、そんなんで言ったら全然ズバ抜けたものがあると思いますからね。持ってるもの、人に与えるものとか言ったらすごいあると思うんですけど、そんな鈴木さんばっかりにおいしい思いをされても。されたくもないし。MISSIONに関しては、本当にやれる選手がやればいいと思うから。プロレスは。誰でもできるパンクラスになってほしくないし、誰でもできるプロレスっていうのも僕は反対ですから。誰でもはできないパンクラスの中で、誰もできない伊藤崇文の試合をしていけば良いんですよね。そういう意味でいうと、プロとして鈴木みのるっていう選手には負けたくないです。

わかりました。では次に稲垣選手の引退に関してなんですけど、このお話は以前、オフィシャルサイトの『Monthly interview』の方でお聞きしてますので、ここでは敢えて割愛して、次の出来事、7月のネオブラッド・トーナメントでのismの若手3選手の1回戦敗退に関して。実際会場の後楽園ホールで試合をご覧になってていかがでした? 今回出場した3選手(中台 宣、アライケンジ、金井一朗)は。
伊藤崇文:まぁ、結果はアレなんですけど、どこの選手と比べても同じに見えるのがイヤですね。雰囲気がアマチュア臭い。そこがかぶるのがイヤですね。それでいて結果も落としてるじゃないですか。だったら下に見られますよね。やっぱり。だからよけい甘えてるんじゃないかって見られますよね。いろんな意味で。それは僕も含まれてるんですよね。結果を落とせばそういうふうに見られますから。特にismの選手は、食事も出て道場もあってって環境ですから。だからって言って、向こうがアルバイトをしながら練習してるって言っても、僕、そのデビューするまでの練習生としての1年間はそれ以上の辛い思いとかをしてきてますからね。まぁ、比べるのはアレですけど。「じゃぁ、やってみろよ」って思うんですけど、でも最近はそうも思わなくなってきましたね。そういう人に対して。できへんからやってへんねんなっていう。コイツらできへん奴やからここに入ってこられへんねんなっていう。そう思われるような敷居の高いパンクラスだと思ってるんで。だからそういう選手たちには負けたくないですよね。特にネオブラッドの選手たちは負けちゃいけないと思います。若い試合で良いと思います。高橋さんの試合(VS小澤 強戦)の方が若く見えたというか、生き生きとして見えましたね。同じ勝ちたいという気持ちでもあれだけ違うのかなっていう。そう思いましたね。あの日は決勝まで1日2試合でしたけど、だからといってそんなにセーブしてたとは僕は思わないですから。ismの選手は。何かちょっとかしこまって試合をしてるのかなって。でも僕がネオブラッドに出た時も「まだ遠慮してるぞ」っていろいろ言われたくちなんですけどね。何かカッコつけようとしてるのかしてないのかわかんないですけど、やっぱそういうふうに見えちゃうんですかね。雰囲気からして負けてるのが同じくらいイヤですね。パンクラスismは違うぞくらいの、お前らオレより下だぞくらいの雰囲気が出てても良いんじゃないかと。口で言うんじゃなく、態度で示すのでもなく、リングに上がった時の雰囲気で、高価なものであってほしいですよね。パンクラスismの選手は。正直アライには期待してたんです。ちょっと雰囲気があるかなって思う部分があるので。何か良い選手じゃないですか。まぁ、結果を落としてるのもあるんですけど、若い試合をするんですよ。中台とか金井とかに比べて。ウェルター級の選手として見た場合はライバルになるんですけど、先輩としての立場から見ると、全然ネオブラッドで優勝するべき選手だと思ってたんですよね。正直なところ。だからちょっと残念ですよね。まぁ、本人がその辺は1番感じてると思いますけど。ケガというおまけもついたし。そういう時のケガを、今後本人がどう対処していくかが大事なんじゃないですかね。いづれ対戦するかもしれない選手なんですけど・・・。あのケガを上手いこと生かしてほしいですよね。おいしく。ケガしたことをプラスにもっていってほしいですね。それができる選手だと思うし。試合に躍動感があるじゃないですか。惜しいんですよね。結果も当然必要なんですけど、それ以上にもっと何か残せるものがあると思うから。まぁ、何回も言いますけど、みんなのゴールは「勝ち」なんですよ。勝利至上主義でOKなんですよ。でもやっぱり高橋さんの方が凄かったぞって。それだけのキャリアがあって、みんなが知ってるから高橋さんを観るっていうのもあると思うんですけど、でもそんなこと言っててもそれは言い訳でしょ。一発目でできる人はできると思うし。ん〜・・・もっと良い意味で目立つ方法を考えても良いと思います。

わかりました。では、10/4(土)グランキューブ大阪大会の話に移りますけど、伊藤選手が欠場している間におこった出来事に対して、これまでお話ししていただいたようなことを感じ、考えた上で臨むVS花澤大介13戦ですが、まずは対戦相手の花澤選手に対する印象を教えていただけますか? 5月・横浜大会でのVS大石幸史戦、7月・後楽園ホールでのVS関直喜戦、両方ご覧になってらっしゃると思いますが。
伊藤崇文:とにかく力強いなって印象がありますね。それが一番強いですね。他がどうっていうのは見えてないっていったら見えてないんですけど。あれが全てかっていったら全てかも知れないし。いろんな見方があるんですよね。まだプロとして2戦目(VS関戦)だから、緊張しててああいう試合になったのかなっても思うし。花澤選手にしてみたら、対戦相手が僕ということで、当然その先に僕が三島選手を見てるっていうのを本人も思ってるだろうから、また捉え方も変わってくるかも知れないので。花澤選手に関しては、別に研究とか云々はないですね。実際、試合を生で観てるんですけど、それよりもコブラ会という名前の方が僕の中ではデカイですね。おいしいです。

では、今回のVS花澤戦というのは、伊藤選手の復帰戦であったり、三島選手へのリベンジに向けたVSコブラ会であったり、また今大会のメインイベントであったりと、いろいろな見方ができる試合なんですが、伊藤選手ご自身の中では何が一番大きなテーマになる試合なのでしょうか?
伊藤崇文:三島選手。

ご自身の復帰戦よりも?
伊藤崇文:ハイ。

メインイベントよりも?
伊藤崇文:ハイ。まぁ、だからこそメインだと思うし。いろんな対戦カードがありますけど、一番観やすくてわかりやすいのはこれじゃないですか。昔のプロレスでいうと、蔵前(国技館)前の名古屋か大阪って感じですよね。「さて来週の『ワールドプロレスリング』は、遂に激突! 伊藤VS三島」ってなれば、ちょっとづつ僕の理想に近づいていくと思いますよ。ん〜・・・年齢を重ねてきたからでもないと思いますけど、目をケガしてからの僕の理想って、ホントに何か、ワールドプロレスリングって、そこにいくんですよね。まぁ、猪木さんもそうなんですけど、やっぱりそこに辿り着くんですよね。根本が。金曜8時のワールドプロレスリングがスゴイ僕の中に残ってるんで。それが今の時代に合うかどうかはわからないですけど、僕にそういう気持ちが残ってるから。頭の中から離れないんで。全くそのまんまっていうのができるかどうかはわからないですけど、観た方が僕が思ってる気持ちで観てくれれば、それが『ワールドプロレスリング』になると思います。1個1個のテーマじゃなくて、後楽園ホールがあって、地方巡業があって、名古屋行って、大阪では何かこうムシャクシャして、蔵前でズバッて切ってくれる。それにこれはなってると僕は思ってるので(笑)。

ここまで或る意味ドラマ性のある試合っていうのは・・・
伊藤崇文:僕は初めてですね。小さいのはあったような気はするんですけど。でも、これは三島選手がイヤって言ったら終わる話ですからね。僕の勝手なワガママですから。

伊藤選手ご本人的には苦しいわけじゃないですか?
伊藤崇文:いや、楽しんでますよ、でも。

今、ご自分のドラマを客観的に観ることができてます?
伊藤崇文:できてますよ。全然。だからこそおいしいなって思えるんですよね。当然、花澤選手は絶対倒さなあかん相手って冷静に思ってるし、その後ろに三島選手も見えてるし。もし今、『DEEP』で負けた時のあのチンプンカンプンの状況だったら、多分、人として成り得てないなと思いますね。そんなチンプンカンプンの状態のままリングに上がるとしたら、それはプロとして精神的にしっかりできてないと思います。それはケガもあって、ゆっくりゆっくり客観的に見れるようになってると思いますし。なってます。言い切れます。特に当の本人だからおいしく思えるし。例えば自分がお客さんの立場だとしてもおいしく思えます。今、自分がそういう立場やからおいしいって思うかも知れないけど、全然おいしいんじゃないですか。全然「次週の『ワールドプロレスリング』は?」っていう感じになってると思います(笑)。

わかりました。では、久々の地元・大阪での試合となる、今回のVS花澤戦への意気込みをお願いします。
伊藤崇文:2年2ヶ月ぶりの地元・大阪での試合なので、楽しみにしてくれている方も多いと思います。ただ、僕自身は地元、大阪での試合というよりも、11ヶ月ぶりの試合っていうことで捉えてて、そこを楽しみにしているので、僕の『ワールドプロレスリング』を観に来て下さい。

では最後に、伊藤選手の勝利を楽しみにしていらっしゃるファンの皆さんへのメッセージをお願いします。
伊藤崇文:メインイベントに出る伊藤崇文の試合が必ず一番面白いので、必ず観に来て下さい。と、会場入りの時と、リングに上がる時の僕のファッションに注目して下さい(笑)。

伊藤崇文選手database