2月15日(日)の梅田ステラホール大会で、和術慧舟會GODSの星野勇二選手との3年ぶり2度目の対戦(※前回はキャッチレスリングで対戦)が決定している伊藤選手ですが、そのVS星野戦についてお話をうかがう前に、まずは前回の試合、昨年12月・ディファ有明大会でのVSリンソン・シマンジュンタク戦についてお聞きしたいと思います。リンソン・シマンジュンタク選手(バイオ・ファイティング・クラブ)はパンクラス初のインドネシアからの選手ということもあり、全くの未知の選手でしたけど、1ラウンド、アームロックによるレフェリーストップで、きっちり伊藤選手が勝利をおさめました試合でした。その試合内容自体に関してはいかがでした? 試合後のインタビューで、「極め技になった下からの関節技はGRABAKAだけじゃなくてismにもできるんだ」という感じのことをおっしゃってましたけど。
伊藤崇文:そうですね。まぁ、GRABAKAの、ひねったわけじゃないですけど、多少そういう言い方をしましたけど、あれがこれからやることの全てじゃないし、基本的には今までのismと変らない上からの攻撃を僕はやっていきたいと思います。僕自身で言えば。まぁでも、きっちり勝っとかないといけない相手だったことは確かですね。

では、そのVSシマンジュンタク戦が伊藤選手にとって昨年の試合納めになりましたけど、昨年一年間を振り返っていただくと、2003年は伊藤選手にとってどういう年だったのでしょう?
伊藤崇文:あの〜今までの人生では、僕はいつも何ミリかは進んでたと思いますけど、去年は停滞していた年だったと思えるんですよね。2度目のケガもあったし。復帰して2連勝したから進んだとか、逆に後退してるとも別に思わないんですけど、去年初めて自分の人生の中で足踏みしたなっていう。目をケガした時でさえ僕は進歩したと思ってるので。

ご自身で考える、「停滞」の一番の原因って何ですか?
伊藤崇文:2度目のケガをした時に、結構ケガが多いな、最近ケガが多いなって思うようになったので。そういうのですよね。冬場に多かったんですよ。ケガすることが。でも絶対冬にケがをするってわけでもないんですけど、こういうのがトラウマになって、練習で思い切ったことができなくなったら、気を使い出したら嫌やなって考えて。そういう意味で停滞ですよね。やっぱり練習してないと自信が付かないし、不安も取り除けないし、もちろん強くなれないから。そういう意味で僕は停滞したと思います。

では、今おっしゃったように心理的な部分が大きい上での停滞ということですが、昨年一年間にご自分で点数をつけるとすると、100点満点のうちで何点でしょう?
伊藤崇文:点数・・・。まぁ、0か50か100だとすると、50ですね。真ん中で。停滞してたってことで。点数をつけるのは難しいんですけど。下がってもないし。0じゃないんですよね。考える期間もあったし、試合で言ったら勝ってるし。練習もケガが治ってからはやってるんで。でも、勝ったってことよりも、練習できて試合ができるようになったことよりも、その精神的なことの方が大きいので50点。80点とか中途半端なのはわかり難いので。

わかりました。では、格闘技界は年末の大晦日まで大きな興行がありました。『PRIDE男祭り』には近藤選手が出場して、その近藤選手のセコンドに伊藤選手は付いてましたけど、神戸で開催された『猪木ボンバイエ』ではジョシュ・バーネット選手とセーム・シュルト選手の無差別級のタイトルマッチが行われました。この無差別級のタイトルマッチの試合映像はご覧になりました?
伊藤崇文:観ました。

ご覧になっての感想は?
伊藤崇文:ジョシュ・バーネットはきっちり練習できている選手だと思いますね。あと、気持ちが強いですね。良い心を持った選手だと思います。別にチャンピオンだからとかじゃなくて。同じプロレスラーとして見習うところがありますね。「技術じゃなくてハートを持ってればプロレスも総合も一緒だ」って、雑誌に載ったインタビューを読んだんですけど、純粋に説得力があってカッコ良いと思います。真似たいところですね。技術云々というより。(試合中に)退くことがないんですよね。

では、無差別級のタイトルマッチと近藤選手の試合以外で、伊藤選手の心に残った試合というのは何かありました?
伊藤崇文:ん〜、新日本プロレスの選手が出てる試合とかがあったじゃないですか。プロレスラーと名乗るなら、判定でも何でもいいからとにかく勝ってほしいんですよね。負け方が良かったからプロレスラーっていうのも、もう遅いと思います。判定でも何でも、真正面からぶつかって勝つ。最低ラインが真正面からぶつかって負けるですよね。挑戦しただけでちやほやされるんだったら、もう出なくていいんじゃないですかね。僕はパンクラスもプロレスだと思ってやってるんですけど、僕が見てきたプロレスを壊さないでほしいですよね。今、プロレスのシビアな部分が、昔僕が見た新日本プロレスから総合に持っていかれてると思うんですよね。で、プロレスラーが挑戦するなら、僕はとことんやってほしいなって思います。勝つまで。もし負けたとしても、次もやるくらいでいいと思いますね。それで勇気を与えられたらそれもプロレスラーでしょう。

わかりました。では、セコンドに付いた近藤選手の試合なんですけど、あの日、リング上のことだけではなく、試合前の控え室、試合後の様子も含めて、あの日の近藤選手をどうご覧になりました?
伊藤崇文:いや、何だかんだ“不動心"って言いながらも、僕はすごく欲のある選手だと思いましたね。あの日、ずっと間近に最初からいて。本人は「さほど有名にはなりたくない」とかそんなこと言ってますけど(笑)、でもすごく(有名に)なりたいって思ってる選手だと思うので。当然そうでないといけないと思いますけど。特に最高の舞台が今、近藤に用意されることが多いと思うので。でも、多分そういう立場もわかってるし、パンクラスを背負ってるっていうのも、本人はすごいわかってると思うし、いろんな欲を持ってると思いますね。

リング上の闘い振りをご覧になってていかがでした?
伊藤崇文:何て言うか・・・穴はすごいあると思うんですよ。どこが?って言われるとわかり難いんですけど。でもそういうふうにさせないですよね。自分がやりたいことってあるじゃないですか。やらなきゃいけないことの数が多い方が、それを出した方がやっぱり勝利にちかいと思いますけど、その数が出ますよね。まぁ、精神的な強さも技の強さもあると思いますけど。

伊藤選手は今回セコンドという形で花道を歩いて、リングに上がって、そして会場を見渡しましたけど、そこで『PRIDE』さんという闘いの場に何か感じることはありました?
伊藤崇文:やっぱりいろんな人が出てきてて、1つじゃないなって。いろんな、どこか団体なりの旗を持って出てきてるっていうのがありますね。今のパンクラスはその縮小版のような感じがあるので。パンクラスの興行でも、出てる選手それぞれがどこかの代表なんでしょうけど、そのワールドワイド版って感じがして。良い雰囲気だし、当然出てみたい舞台ではありますね。もちろん。

では、そういう『PRIDE』さんの会場で大晦日を過ごして、翌日は当たり前ですけど2004年の元旦で「1年の計は元旦にあり」という言葉もあるくらいなんですが、年頭に何か目標なり、計画なりというものを立てました?
伊藤崇文:計画っていうか・・・実は去年決めたことがあって。これだけはやろう、これをしようって。これができなかったら、もう次の年はないぐらいに決めてることがあるので。それは復帰する前ぐらいですね。

その決めた事、やろう、しようと思っている事に対して、現在は順調に進んでるんですか?
伊藤崇文:今のところマイナスはないです。まだ見えかけてないって言えば見えかけてないんですけどね。これをやろうってことはあるんですけど。別に誰々を倒すっていうのも当然あるんですけど・・・今、そこまで到達する段階まではいってないです。新しい事に挑戦したいっていうのも1つだけあるんですよ。それと誰々と対戦したいっていうのもあるんですよね。

挑戦したい新しい事っていうのは、それは期限があるものなんですか? それとも選手であリ続ける限り追い求めていくことですか?
伊藤崇文:やってみたい、興味のあることですね。最初は興味だったんですけど、ちょっとやってみようかなって。

いついつまでにっていう、期限付きのものではない?
伊藤崇文:ないですね。ハッキリとそれに対して自信が持てたらやろうかなって。ホントほんの少しですけど、進んでることは確かですね。誰々と対戦したいっていうのは、三島(☆ド根性ノ助)選手。

わかりました。では、ちょっと伊藤選手ご自身のことから離れますが、先日(2/6)の後楽園ホール大会で、國奥麒樹真選手(パンクラスism)と三崎和雄選手(パンクラスGRABAKA)が対戦して、三崎選手が勝利しました。パンクラスismとしては道場長がGRABAKAの選手に敗れてしまったわけですけど、あの一戦をご覧になっててどんな心境でした?
伊藤崇文:悔しいですね。当然本人が一番悔しいんですけど。お客さんも僕と同じ気持ちだったと思います。去年の11月(両国国技館)に船木さんの発言があって、その日國奥さんは芹澤(健市)選手とタイトルマッチで対戦したんですけど、その試合の後に國奥さんと話をしたら気持ちは同じだったんで。まぁ、國奥さんは柔らかい表現でしたけど。でも、それはその人の言い方であって。僕みたいにキツく感情のまま言ってしまうか、國奥さんみたいに柔らかく言うか。でもファイトスタイルをみたら、それは柔らかい気持ちじゃないっていうのがわかるじゃないですか。それだけに悔しかったですね。今回、一緒に練習をしてきたので。

現在はウェルター級を主戦場にしている伊藤選手ですけど、以前はミドル級でも試合をしていて、三崎選手とは一度対戦が決まりましたけど、伊藤選手のケガでその試合がなくなった経緯があります。そういう、過去に接点があった三崎選手がismの道場長に勝利して、試合後にはGRABAKAの、そしてパンクラスの看板を背負って大きな舞台に出ていきたいという発言がありました。伊藤選手のお気持ち的にはどうなんでしょう?
伊藤崇文:いや、「こいつと対戦してもいいかな」って一瞬そんな気が起こったのは確かです。道場長の首が獲られたんで、それはホント思いましたね。今、ここで言うのはズルイかも知れないですけど。

もし対戦することになった場合、お二人は階級が違いますから確実に無差別級戦ってことになると思いますけど、そのリスクを背負ってでも勝負したいと思います?
伊藤崇文:そうなったら、向こうは看板かけて出て行くって言ってるので、僕もismの看板を掲げていくしかないんじゃないですか。具体的じゃないですけど、今、そういう気持ちがあるってだけで。でも、僕の中では、今は次の対戦相手の星野選手だとか、自分自身の目標が先であって。僕のやりたいことの先でismを表現していきたいので。

わかりました。では、その星野選手との対戦についてお聞きしていきます。今回、3年ぶり2度目の対戦で、前回はキャッチレスリングでの対戦でしたけど、当時の星野選手と現在の星野選手を比べてみて、伊藤選手はどの辺が変ってきたと思いますか?
伊藤崇文:そんなに変ったっていうのは別にないと思うんですけど。今回も体力勝負になるなって気はしてますね。北岡(悟)との試合(2003年6月・梅田ステラホール)を観ても。変ったっていう印象は別にないですね。全然。

では、最近の星野選手の印象ってどんな感じですか?
伊藤崇文:やっぱりレスリング。パンチも上手いと思いますけど、やっぱりレスリングベースで、腰が重いとか、力が強いとか。そういうのですね。だからこうやったら勝てる、ここに持ち込みたいっていうのは、誰もが同じ作戦を立ててくると思いますね。

では、作戦、試合のシミュレーションはもうできていると。
伊藤崇文:そうですね。でも基本的には自由にやろうと思ってますけど、一応こうしたいっていうのはあります。こうしちゃいけないっていうのもあります。ただ、これしたらアカンなっていうのも、今はこうなっても大丈夫かなっていう状態もあります。

今回、星野選手としてはリベンジを目指す試合で、逆に伊藤選手としてはそれを迎撃する立場での試合になります。
伊藤崇文:ん〜、ルールが違うんでねっていうのがありますから。全く前回とは別物っていう感じで僕は捉えてるんですよね。でも、本人がリベンジしたいって言ってるので、彼のリベンジしたい気持ちと、僕がパンクラスismを背負っている気持ちのぶつかり合いだと思います。彼のリベンジという気持ちに対して、僕は返り討ちだっていうのはないですね。前回のことは過去のことで、今はもう僕自身の状況が違うから、多分そういう言い方になると思いますけど。まぁ、負けた選手の心の中にその負けが残ることは、僕が一番よくわかるので(苦笑)。

わかりました。ではもう一つ。伊藤選手は現在ウェルター級のランキング2位で、星野選手は6位です。伊藤選手に勝利することによって、星野選手は一気にタイトル挑戦のチャンスが見えてくると思いますけど、そういう追われる、狙われる立場ということに関してはいかがですか?
伊藤崇文:いや、別に追われているとも思ってないですね。全然。迫力のない言い方かも知れませんけど(苦笑)。自分は自分のやりたいことをやりたいなってだけですね。当然パンクラスismっていうのも含め。自分がこれからやりたいことのためにきっちり勝ちたいなっていうぐらいで。でも危機感がないわけじゃないですよ、別に。復帰してから2戦してますけど、最大の強敵だと思ってますから。花澤(大介13)選手やリンソン(・シマンジュンタク)選手と比べて、全然ズバ抜けている選手だと思うので、その辺は脅威ですよね。前の2試合とは全く違うっていうのはわかってます。

では、今回の試合で伊藤選手が一番大切にしたい事、大事な事って何でしょう?
伊藤崇文:勝ち(笑)。

勝つこと?
伊藤崇文:はい。

判定だろうが一本だろうがとにかく勝つこと?
伊藤崇文:はい。勝ちイコール今は強いでいいですね。

ではもう一つだけ。今回、メインイベントには前田吉朗選手(パンクラス稲垣組)が登場します。伊藤選手はその前のセミファイナルになりますけど、キャリアで言えば圧倒的に伊藤選手の方が長いですよね。でも前田選手がメインに立つ。このことについてどう思います?
伊藤崇文:いや、僕が絶対メインに立ってないといけないでしょうね。やっぱり。その興行に出るismの選手がメインをとってなきゃいけないと思います。稲垣組がismと離れてるってことじゃ別にないですけど、絶対取ってなきゃいけない場所だと思います。

わかりました。では、これで本当に最後です。当日、伊藤選手を応援していらっしゃる皆さん、あと伊藤選手の試合を楽しみにしていらっしゃる皆さんへのメッセージをお願いします。
伊藤崇文:今の自分を見て下さい。頑張ります。以上です。

注目するファッションとか、今回はないです?(笑)
伊藤崇文:え〜、まぁ、いつもの・・・。別に勝つことに拘ってるので、そういうので見せる気は全然ないです(笑)。

伊藤崇文選手database