まずは前回の試合となった昨年11月両国国技館でのバレット・ヨシダ戦を振り返っていただきたいのですが、強豪相手の闘いでした。正直前評判では前田選手不利かなという一戦でしたが、見事秒殺KO勝利を収めました。
前田吉朗:いやぁー、激しいやつでしたね。今まで対戦した選手の中で一番激しく攻めてきましたね。もっと寝技の展開というか寝技で追い込まれるんちゃうかと思ってたんですけど、まあ(KO勝ちは)たまたまっすよ。ちょっとあっけなかった感じはありますけど、でももっと世界の寝技を体験したかったかっちゅうと、そんなこともないんですけどね(笑)

この勝利で見事デビュー以来7連勝、またバレット選手に勝ったっていうことでまわりの反響も大きかったんじゃないですか。
前田吉朗:「凄いかった」ってけっこう言われましたね。口には出さなかったですけど、バレット戦は結構みんなヤバイと思ってたんじゃないですか(笑)

2003年はデビューの年でもあったわけですけど、一気に階段をかけのぼった年だったの思うんですが、ご自身としては大満足の年だったんじゃないですか。
前田吉朗:満足といえば満足ですけど、まあいい年でしたね。

自分で昨年を振り返って点数をつけるとしたら何点になりますか。
前田吉朗:80点ぐらいじゃないですかね。100点満点というのはないと思うんですよ。自分で100点をつけてしまったら、その時点でもう終わりだと思うんですよね。やっぱりさらに上を目指していかんとダメだと思いますから、100点満点をつけるっていうのは今後もないですね。

昨年行った全7試合のうち印象に残った試合はありますか。
前田吉朗:特に印象に残ったというのはないですね。終わったことなんで、どれが特にというのはないです。しいてあげるなら砂辺戦(2003.5.18)の時から「稲垣組」を名乗ったっていうことですかね。「稲垣組」を名乗った時点で、負けは許されないって思ってましたから。

では、今回対戦するアレッシャンドリ・ソッカ選手に関してお聞きしたいのですが、「アブタビ・コンバット」での優勝経験もありますしバレット選手に続いて寝技の強豪選手が相手となります。
前田吉朗:そうですね寝技の選手ですね。ただバレット戦の時の方が今回よりはるかに緊張してましたね。今のところは全然緊張していないんで、試合の直前にめっちゃ緊張しそうな気もするんですけど。

今回そんなに緊張しないっていうのは、自信があるってことなんですか。
前田吉朗:僕的にバレット選手と対戦したことによって、世界レベルの寝技は結局味わってないですけど、世界レベルの寝技の選手と対戦するっていう緊張感は味わってるんで、それを一度経験したっていうのが大きいんじゃないかと思うんですよね。

ソッカ選手との一戦はどんな試合になるんでしょうか。
前田吉朗:僕は、IQレスラーなんで、試合前に作戦をあかすようなことはしないですね、へへっ(笑)

そういえば、バレット戦の前のインタビューでは、秘密兵器の「電電(でんでん)」を開発したとおしゃってましたが、結局その「電電」が出ることなく試合は終わってしまったんですが、今回は「電電」が出るかもしれないですか。
前田吉朗:「電電」は・・・忘れましたね(笑)もう「電電」をやる場面になっても、できないです(笑)「電電」の時代は去りました(笑)今の格闘技界のスピードは速いっすからね。

では、今回の2月15日梅田ステラホール大会は前田選手がメインイベントに登場してトリを飾るわけですが、前々からおっしゃてた「稲垣組が大阪興行を仕切りたい」ということに近づいてきてると思うんですが。
前田吉朗:そうなんですけど、稲垣組がメインていうのはいいんですけど、俺じゃなくていいんじゃないですかね。

でも現状では、やっぱり前田吉朗がメインだからお客さんも納得するんじゃないですか。
前田吉朗:いやほんま最初は嫌やなって思っとたんですよ。稲垣さんにも「メインは嫌なんで会社に言って変えてもらえないですかね」って話しまたし。でも稲垣さんや冨宅さんに「メインというのは意識せずに、普段どおりにやればお客さんには伝わるから」って言ってもらって、気が楽になりましたね。まあメインに選ばれた以上は、俺が最後にしょっぱい試合をして、「パンクラスおもんないな」「稲垣組ってしょぼいな」言われるのは癪なんで、そうは言わせないようにします。

今大会は、第1試合に同じ稲垣組から藤本直治選手がデビューしますが、藤本選手がどんな選手か紹介していただけますか。
前田吉朗:藤本は練習では、そんな強くはないんですよ(笑)稲垣組では、武重(賢司)さんと藤原(大地)と僕が同じぐらいで、藤本はちょっとって感じなんすけど、一本勝ち率は一番高いんですよね、なぜか(笑)なんなんすかね、本番に強いですね。持ってる力以上のものを試合で出せるタイプですね。藤本が「第1試合は吉朗さんにつなげるために、一発盛り上げますよ」って言ってたんですけど、僕にしたら、メインまでみんなが面白くない地味な試合をして、最後に僕がチョコっといい試合をしてお客さんが「おおっー」って盛り上がるのを狙ってるんですけどね(笑)

そんなこと言っていいんですか。梅田大会にも出場する北岡悟選手はこのインタビューを毎回チェックしてますよ(笑)
前田吉朗:えっ、うそっすよ。そんなこと思うわけないじゃないですか。みんながいい試合をして盛り上がればいいなと思っております。

急に態度が変わりましたね(笑)では、昨年に続いて今年も前田吉朗の活躍に注目が集まると思いますが、今年はどんな年にしたいですか。
前田吉朗:今年は勝ちたいですね。うーん、やっぱり勝ちたいっていうのと、試合を多くこなして経験値を上げたいですね。そのためには強豪と言われる選手とどんどん闘っていきたいですね。まだパンクラスのフェザー級っていうのは、そんな層が厚いわけではないんで、勝ち続けてるっていっても、まだまだ強い選手はたくさんいると思うんですよね。例えば修斗の選手と闘ったらどうなるんやろって思いますし。

前田選手としては、どんどん強い選手と闘って経験を積んでいきたいということですが、今後は挑戦していくと同時に首を狙われる立場になってしまったわけですが、そういう意識はありますか。
前田吉朗:意識しますね。首を狙ってくるヤツはボッコボコにしてやりますよ(笑)でもやっぱりまだまだ挑戦を受けるっていう偉そうな立場じゃないですから。闘って勝ったら「前田すごいな」ってなるような相手と対戦したいですね。やっぱそっちの方がおいしいじゃないですか(笑)でも正直、今のフェザー級の実力ってそんなに差はないと思うんですよ。たまたま運がよくて勝ってますけど、もう一回対戦したら志田選手にしろ砂辺選手にしろどうなるかわからないっていうのはありますね。和知選手とは対戦してないですけど、やったら強いやろなって思いますし。

ぶっちゃけ連勝ということに関しては、意識というか執着はありますか。
前田吉朗:してないことはないですけど。あくまで結果なんで。格闘技は結果が全てとか言いますけど、実力がなくても結果が出る時もあれば、実力があっても結果が出ない時もあるじゃないですか。だから結果よりも自信が欲しいですね。自分がどんどん上に上がっていった時のために何か武器が一つ欲しいですね。稲垣さんにかなり前に言われたことで「別に結果が全てじゃないぞ。結果試合に勝ったとしても、自分の気持ちが途中で折れたり、あきらめたりして勝ったとしてもそれは勝ちじゃない。逆に結果負けたとしても、心が折れることなく全くあきらめることなく精一杯闘ったとしたら、それは負けではない」っていうのがあったんですけど、最近その意味がわかってきた気がしますね。

では、特に連勝してるからといって調子にのってるというわけではないのですね。
前田吉朗:いや、調子にのってますよ(笑)天狗っすよ(笑)ちゅうか天狗になれるような勝ち方もしてないですから。結構ヤバイ試合はありましたからね。

あと稲垣組の若頭にお聞きしたいのは、今年は稲垣組をどういう風にもっていきたいかっていうことなんですが。
前田吉朗:やっぱり稲垣組の名前を売っていきたいですね。「GRABAKA」みたいにどこにいっても通用するようにしたいですね。稲垣組という名前を聞いて「みんなが稲垣組やったら強いやろ」って思うようにしていきたいです。

では、いつも前田選手が悩んでるファンの方へのメッセージですが、
前田吉朗:ないですね。お客さんには何も言うことはほんまないんですよ。デビュー戦の時なんかむしろお客さんにむかついてましたから(笑)こっちはめっちゃ緊張して入場してんのに、みんなへらへら笑いやがって、見せもんちゃうぞ、コラッって(笑)

ある意味というか、見世物なんですけどね、パンクラスは(笑)そんなこと言ってると印象が悪くなっちゃいますよ(笑)
前田吉朗:お客さまは神様です(笑)でもまあ今回はメインを努めさせてもらうっていうのがあるんで、僕の敵はソッカだけじゃなくて、お客さんも敵だと思って闘いますから。僕はしょぼい試合をしたらブーイングでもなんでもしてください。僕はソッカを倒して、お客さんのが満足そうな顔をしてるのを確認してから、はじめて勝ち誇った顔をしますんで。

前田吉朗選手database