3月29日(月)の後楽園ホール大会で、昨年6月の梅田ステラホール大会以来、9ヶ月ぶりにホームリングに帰ってくる佐藤光留選手。対戦相手は、昨年の『ネオブラッド・トーナメント〜ミドル級〜』チャンピオンで、現在パンクラスマットで3戦3勝負けナシの中西裕一選手(フリー)に決定しました。そこで、まずは今回のVS中西戦のお話をうかがう前に、この9ヶ月の間に佐藤選手が獲得した『DEMOLITION』のタイトル、『DEMOLITION MIDDLE WEIGHT 4MEN TOURNAMENT』での2試合を振り返っていただきたいと思います。今年1月(横浜・赤レンガ倉庫)に行われた決勝(VS中村大介戦)は、それこそ“激闘"の2文字がふさわしい試合になりましたが、トーナメントを全体的に振り返っていただいて、現在、どうような感想をお持ちですか?
佐藤光留:1回戦(昨年9月/横浜・赤レンガ倉庫)で外山(慎平)選手(和術慧舟會 東京本部)との対戦が決定したって聞いて、軽く落ち込んだのを憶えてますね(苦笑)。「やべぇ〜」って。僕は数ある格闘家の中でも、本当にもう、TOPどころの自信のない選手なんで(苦笑)。自分で言うのも何ですけど。だから「これは厳しい闘いだ」って思いましたね。まぁ、常に一か八かなんですけど、試合までに寝技の練習しかしなかったんですよ。寝技が強いって聞いてたんですけど、だからって打撃でいってどうすんだ?って。だから寝技の練習、足、足、しつこく足、上に乗られても上を取り返して足!って練習ばかりしてて、実際はKO勝ちという(笑)。訳わかんねぇよって(笑)。

格闘技人生初のKO勝ち?
佐藤光留:そう。あれ、多分最初で最後。

どうでした(笑)? 初のKO勝ちは?
佐藤光留:これ、いろんなところで言ったんですけど、僕がKOで勝って「ウシャッ」って喜んでたら、みんな笑ってるんですよね(苦笑)。「おい、おい、待て!」と。大石(幸史)とか北岡(悟)とか大爆笑だったらしいですよ。「お前ら後輩やろっ」て(苦笑)。まぁ、構わないですけど。

リングでマイクアピールもしました。7月の『ネオブラッド・トーナメント』の後ということもあって、「パンクラスの選手がネオブラッドで負けて、俺がここで負けるわけにはいかない」と。それはやっぱり試合前から意識していたことですか?
佐藤光留:自分のことで精一杯だったんですけど、練習していくうちに・・・。僕、『ネオブラッド』に2回出場してるんですけど、1回も勝てなかったですからね。だからこれで勝てなかったら終わりやなって思ってました。それで相手が外山選手で・・・。正直しんどかったですね。

1回戦をKOで勝ち抜いて、次の決勝ですけど、2回延期されました。1回目は佐藤選手自身のケガが原因で、2回目が対戦相手の中村選手のケガによるものでした。延期、延期、という時の心境ってどういう感じでした?
佐藤光留:ん〜自分のケガの時は「やってしまった!」って思いましたね。手が痛かったんですけど、最初病院に行かなかったんですよ。で、行ったら「折れてる」って言われて。「1ヵ月後に試合があるんですけど」って言ったら「無理」って。実際無理で(苦笑)。でもまぁ、1回延期になった後は、いつ試合がきてもいいような感じでしたけどね。だから相手のケガで延期になった時も、そんなに動揺しなかったし。相変わらず道場にいましたし(笑)。

延期、延期で、実際決勝が行われたのが今年の1月。大盛り上がりの大熱戦の末の判定勝ちでしたけど、トーナメント優勝が決まった瞬間の心境はいかがでした?
佐藤光留:嬉しかったですね。年末とか正月とか、みんながどっか行ってる中で練習してて。僕だけじゃないし。そもそも格闘家ってもともとそういうものだと思うし。年末だから(実家に)帰る。で、TVをつけたら大晦日に試合してて。1月4日には(新日本プロレスの)東京ドームがあって。それを見て育ってきて、その真っ只中にいるのに自分が何もできないのは悔しいなって思ったし。(ジョシュ・)バーネットが(セーム・)シュルトに勝ったのを観て、良い試合ですごい盛り上がったけど、悔しいっていうのもありましたし。それをぶつけて。ぶつけようと思ったことって今までないんですよ。ルチャ・リブレぐらいで。でもぶつかりかましたね、今回は。

その辺のお気持ちからでた言葉だと思いますけど、リング上でのマイクアピールで、VSジョシュ・バーネット戦をぶち上げました。
佐藤光留:ねぇ。しゃぁないじゃん。思ってたんだもん(笑)。でも、ずっと前から対戦したいって思ってましたよ。あの〜、嫌いなのが、「そんな身分で誰々に挑戦状なんか叩きつけやがって」っていう。それは「ふざけんな」と。僕から言わせれば。言い方は悪いですけど、みんな練習はコツコツしてると思うし、勤勉な人間の集まりだと思いますけど、外に対する姿勢とかまでそんなコツコツしてどうするんだよと。僕らを観てる、普段同じ仕事をずっと繰り返してる人とか、別にその仕事が悪いとかじゃないですよ、僕らも普段やってることだし。でも、何か鬱憤を晴らしたいなって思ってる人とかが僕らを観てるわけですから。なのに、今の僕じゃバーネットに勝てないからとか、まだ実力が足りないから挑戦なんてって、それは格闘家じゃないですよ。プロレスラーじゃないと思うので。だからその後に怒られるかなって思ったんですけど・・・。で、怒られはしなかったんですけど、その分厳しいと思いますよ、これから。「お前、あんなこと言っといて結局これかよ」って言われたら。でもそういうところに身を置いとかないと。常に保身、保身の格闘家なんて、誰がそんなヤツにお金を払うんですか?僕はそう思います。もちろん地道に勝っていくっていうのも大事なことだとはわかってますけど。

バーネット選手への挑戦表明から2ヶ月が経ちましたけど、その思いはまだ消えていません?
佐藤光留:全然。「明日やれ」って言われたら、もう全然いきますよ。

では、VSバーネット戦のシミュレーションはもう出来上がってる?
佐藤光留:できてない。そんなもんできたってねぇ。

バーネット選手の穴は見えてます?
佐藤光留:あのね〜、相手の穴を探していったんじゃダメですよ。僕の得意なものをゴリ押し。それを跳ね返されるか、自分が押し通すか。まさにSammyさまのリーチみたいな(笑)。「あっ、あっ、あ〜」ってところで跳ね返されるか、ポコッていって大当たりを揃えるか。そんな感じですね。

では、この場を使って何かジョシュ・バーネット選手にメッセージがあれば。
佐藤光留:あのね、バーネット選手が登場するまでは、“秋葉原最強"っていうのは僕だったんですよ。これ、真剣に言われたことがあるんですけど。一回も降りたことはないんですけどね、あの駅。でもバーネット選手が来てから、目の上のたんこぶなんですよね。でもバーネット選手は本当にパンクラスが好きだから、僕の言ってることがわかると思いますけどね。パンクラスに対して最近思うんですよ。最近のパンクラスは昔と違うなっていうところで、それを僕なりに考えみたら“せつなさ"なんですよね。負けることは良いことではないんですけど、誰かが負けるとか・・・。パンクラスの原風景って、そういうせつない、ちょっとセンチメンタルな空気だと思うんですよ。だから団体としてまだ存続してるんだと思うし、最近のリングにはそれが少ないかなって。やっぱり残酷ショーにちょっとなり過ぎてるかなと思うし。僕がファイトスタイルを変えるんじゃないけど、ismにいて、鈴木(みのる)さんの教えを信じてやっている自分がやれば、自然にそういうのは出てくると思うし。「そこを汲んでくれよ、バーネット」って思うし。「望むところだ」って言ってくれる相手だと思ってるし。

わかりました。では、今回のVS中西裕一戦のお話に移りますけど、9ヶ月ぶりのホームリングでの試合が遂に決定しました。決まった時の心境はいかがでした?
佐藤光留:あんまり関係ないですね。だって、パンクラスの選手だもん。(パンクラスの)中で闘うことも大事だし、外で、『DEMOLITION』とかで、「パンクラスの選手つえ〜ぇ」って言われることも大事だし・・・どっちも大事。雑誌とかでは、実のところそうなんですけど、パンクラスのリングで良い戦績が残せなくて『DEMOLITION』にって書かれ方をしたんですけど、『DEMOLITION』に出場している選手とかは、何としてでも噛み付いてやろうって僕のところに来るわけじゃないですか。それを思い切りブン殴って、感情をぶつけ合って、振り払って。だから僕は全然都落ちなんて思ってないし。事実はそう(雑誌の通り)だったかも知れないですけど、僕の中ではそう思ってなかったですから。だからパンクラスに出るのも、『DEMOLITION』に出るのも全然変んないですよ。心境の変化はなかったです。

対戦相手に中西選手の名前を聞いた時はいかがでした?
佐藤光留:まぁ、マッケンローだけ気を付けとけば大丈夫ですよ(笑)。いや、まぁ、対戦すると思ってましたから。だって僕、『ネオブラッド』チャンピオンと対戦するのは今回で4回目ですから。1回目が星野(勇二)選手(2000年7月・後楽園ホール)で、三崎(和雄)選手とも対戦(2001年7月・後楽園ホール)してて。もっと言えば山宮(恵一郎)さんとも対戦(2001年8月・日本武道館)してますからね。何人の『ネオブラッド』チャンピオンがいるかわかんないですけど、その中の3人と既に対戦してますから。

中西選手はこれまでパンクラスのリングで3戦(3勝)してますけど、中西選手に対してはどのような印象をお持ちですか?
佐藤光留:え〜、僕が一番苦手とする選手で、僕が一番苦手とする入場で(苦笑)、一番苦手とする勢いで。それだけです。

中西選手がパンクラスで上げた3勝のうち、2つの勝利が金井(一朗)選手と窪田(幸生)選手からです。佐藤選手と同じパンクラスismの選手が既に2人敗れているわけですけど、その辺は意識しますか?
佐藤光留:ないです。

全く?
佐藤光留:はい。だって・・・ismらいしのは俺だもん。金井と窪田さんが対戦してますけど、一番ismらしいのは僕だと思ってるし。まぁ、世間から何言われるわかんないけど、んなこと気にして言ってられるかっ!(笑)。

・・・(笑)。フリーとしてパンクラスのリングに上がり、『ネオブラッド』というパンクラスのタイトルを獲得した中西選手は、見方によってはパンクラスへの侵略者的な部分もあると思いますけど・・・。
佐藤光留:あの人は外からやって来て『ネオブラッド』を獲って、僕はパンクラスにいながら獲れなくて、外のリングで勝たないとホームリングに上げてもらえなかった人ですから、ジェラシーは感じますよ。ただね〜・・・それだけ(苦笑)。

では、もう一つ。
佐藤光留:今後のSammyさまの行く末について。ロデオが20インチの液晶を・・・。

・・・(笑)。硬いお話ですよ、今日は。
佐藤光留:え〜っ(笑)。

あの〜、佐藤選手と中西選手のお二人はすごく対照的なファイトスタイルだと思いますが、ある意味、入場で自己主張するというところでは共通した部分があるとお二人だと思います。中西選手の入場のスタイルに関してはいかがですか?
佐藤光留:あのね〜、僕の一番嫌いなのが入場とファイトスタイルが繋がらない人。入場がお祭りで、闘うところは正統派。(それは)入場に対しての冒とく。入場シーンへの。・・・だから、だって僕はマスクつけてマント携えて、試合でより多く回転して、より多く高く飛んで、より多く攻撃を仕掛けて・・・。入場は、僕の中では、これからこういうファイトスタイルを見せるぞっていう、そのために必要なもので。鈴木さんが中村あゆみさんの歌詞(曲)で入ってきて、そのままの闘いをするじゃないですか。だから特に変ったことをしなくても、一貫性があるからみんな観ようとするんです。僕も、あんな入場してきて、試合でポジションとってこつこつパンチあててっていうのはクソ喰らえですね。(入場で)派手にいって、腕十時(固め)の返し方知らなかったら持ち上げて叩きつけて、伸びたらパーッと逃げりゃいいんですよ。だから郷野(聡寛)選手とは反対。一発ももらわない。そんなことしたってお客さんは喜ばないもん。お客さんを喜ばすために動くんじゃないですけど、僕の思ってる動きをすれば必ずお客さんは喜ぶと思ってます。そういう練習をしてますから、いつも。ismの俺は(笑)。

では、今回のVS中西戦、何が佐藤選手の中でのテーマなんでしょう?
佐藤光留:ちゃんとポジションをとること(笑)。

・・・(笑)。地味ですね〜、テーマ(笑)。
佐藤光留:無理無理(笑)。いや〜もう、さっきも言った通り自信はないんですよ。僕の武器が通じるっていう。回転して足をとりにいって、不利な状態から殴りにいって。不利なことっていうのは・・・それしかしないと思うんですよ、自分は。リスクも多いし。でもやっぱり観てる人が・・・観てる人のためにっていうのはおかしいですけど、でも、やっぱり観てる人に勇気を感じてもらいたいのであれば、格闘家、プロレスラーは保身であってはいけないと思うし、無謀なところに突っ込んでいかなければいけないだろうし。その上で勝つためには、2倍の体力がいるのであれば、それをつける練習をすればいいんですよ。そう思うし。ここまで言って試合がドロドロだったら何か言われるでしょ。でもそうじゃないとダメだと思うし。

わかりました。では、これで最後です。佐藤選手を応援していらっしゃる光留マニアの皆さまに(笑)メッセージをお願いします。
佐藤光留:7m四方のリングからシャイな電波を飛ばすから、テメェらしっかり受け止めろ!

シャイな電波のシャイは、「しゃいなあんちくしょう」のシャイですか?(笑)。
佐藤光留:そう(笑)。“To shy shy boy"な電波を送りますから(笑)。いねぇだろ、そんな電波受け止めるファン(笑)。


近藤有己選手とCD:クリックでZOOM

渋谷修身選手とCD:クリックでZOOM


佐藤光留選手database