4月23日(金)の後楽園ホール大会で、昨年11月・両国国技館大会でのVS近藤有己(パンクラスism)戦以来、5ヶ月ぶりの試合に臨む菊田選手ですが、この4ヶ月間でいろいろなことをお考えになったことと思います。そういう時間を経て、今現在の菊田選手はあの近藤選手とのタイトルマッチに対して、どのような想いをお持ちですか?
菊田早苗:そうですね〜、まぁ、頭でっかちになり過ぎたのが、そこが一番のポイントだなって。あの試合の悪いところでしたね。もちろんそれが良い方に出る時もあるんですけど、やっぱり近藤選手という凄いファイターと闘うことに関しては、そういう細かいことっていうのはいらなかったかなって。もう、バーンって自分からぶつかっていけば良かったかなって、そういう気持ちが今ありますね。だから今度は自分からバババッていこうと思ってます。

菊田選手の錚々たるキャリアの中で、それは例えばパンクラスのタイトルマッチであったり、『アブダビ・コンバット』での優勝(2001年4月)、『PRIDE』さんでの勝利(2002年4月)、そしてオクタゴン(『U.F.C.-J』)の中でも勝利を飾っていますが(2000年4月)、そういう様々な舞台での闘いを通過してきた菊田選手の格闘家キャリアの中で、昨年11月のVS近藤有己戦というのはどういう意味を持つものになったのでしょうか?
菊田早苗:ん〜ホント闘いっていうのは、いつもやる度に考えさせられる部分があるんですけど・・・。やっぱり闘いの原点を学んだっていうのがあるんですよね。何か今さらなんですけど。原点を見たって感じがするんですよね。今までいろんな大会に出場してきたんですけど・・・。(近藤選手との)1度目の闘いがドローになって、それが自分の中ですごく苦しい、苦しかったっていうのがあったので、本当にその辺を引きずりながら2度目の闘いに臨んでしまったなっていう。ん〜、致し方ないですね(苦笑)。

「闘いの原点」という言葉があったんですが、菊田選手の中での「闘いの原点」って何ですか?
菊田早苗:やっぱり作戦面とか技術面とかっていうよりは、本当に本能でガムシャラにいくっていうか・・・。諦めないとか、自分から向かっていく。そういうのが闘いの原点だと思うんですよね。だから、相手が来たところをこう返そうとか、ちょっとスタミナをセーブしなきゃいけないとか、そういうちょっと複雑に考え過ぎたところがあったかなって。それは近藤選手という良いファイターと1度目は本能で闘って、それが辛かったこそ、2度目の闘いで自分が試みた、進歩しようとしてやったことなので、それはまぁ、しょうがないことだと思うんですけど。だからまた元に戻ってやっていこうかなって。

では、11月末のVS近藤戦の1ヵ月後、昨年末には3つの大きな総合の大会があって、その中で菊田選手にも出場のオファーがありました。これはGRABAKAさんのホームページで菊田選手自ら書いてらっしゃったことなんですが、ご自分で今回(昨年末)は出場しないということをお決めになったと。その決断に至った一番の理由というのは何だったのでしょう?
菊田早苗:そうですね〜やっぱり対戦相手に対して燃えるとか、その闘いが目標だったからとかじゃなくて、何かこう・・・ポッとイベント的に(試合が)あったものだったので、「闘いたい」っていうところまで心がいかなかったかなと。負けた後だし、じっくりいろいろ考えて、それでまた練習して、いろんなことをスッキリさせてから臨んだ方が良いのかなって。だから何かこう、踏み込めなかったですね(苦笑)。

今、あの時の決断に対しての後悔はありません?
菊田早苗:それはないですね。まぁ、バーンって負けて、「悔しい。だから次行くぞ」っていうとやっつけ仕事になっちゃいますからね。時間もなかったし、そんな慌てて決めるものじゃないし・・・。負けた後でやっぱり気持ちもシュンってなってるし(苦笑)。長い目で見て・・・。そういう意味では、(次の試合が)もう4月になっちゃったんですけど、肉体的にはピンピンしてるし、試合間隔はいつもこんなものなので、自分としては(今度の試合は)復帰戦という感じは全然なくて、いつものペースでまた出場するっていう感じなんですけど。でも、気持ちの上では復帰戦になるかも知れないですけどね(笑)。

わかりました。では、菊田選手ご自身のお話からちょっと離れて、GRABAKA全体のことに関してお聞きします。この4ヶ月間で、GRABAKAの選手それぞれがいろいろな闘いに臨んで、菊田選手はそれをセコンド等の立場からご覧になってきてますけど、各選手、それぞれ明暗の分かれる結果が出たと思います。佐々木有生選手は昨年12月のディファ有明大会でデビッド・テレル選手(シーザー・グレイシー・アカデミー)に敗れ、同じ大会でGRABAKA所属としての第1戦を迎えた山宮恵一郎選手はドロー。年が明けて今年2月の後楽園ホール大会では、メインイベントで三崎和雄選手が國奥麒樹真選手(パンクラスism)に勝利し、同じく2月に行われた『PRIDE武士道』では郷野聡寛選手がマウリシオ・ショーグン選手(シュート・ボクセ・アカデミー)にKO負けという結果でした。そして先日(3/29)の後楽園ホール大会では、11ヶ月ぶりの復帰戦に臨んだ佐藤光芳選手が敗れ、連勝街道をひた走っている石川英司選手は北岡 悟選手(パンクラスism)に判定ながらも完勝し、その強さを見せ付けました。この4ヶ月間のGRABAKA全体としての流れ、各選手の勝敗を、菊田選手はどのようにご覧になってますか?
菊田早苗:あの〜、当然と言えば当然かなって、ある意味思うんですよ。やっぱり三崎、石川って、VS日本人選手ということに関しては、もう負けないレベルにまで上がったと。逆にこれから郷野、佐々木のように、世界の強豪外国人選手を相手に闘うようになった時に、僕を含めて、今そこが一番きついところなので、明暗くっきりと言うか、現状は当然のことなんじゃないかと思いますね。郷野、佐々木の敗戦っていうのは、日本人選手みんながぶち当たるところだと思うんですよ。逆に一回でも勝てば、それはものすごいデカい価値が出てくるので、だからそれだけ難しいってことですよね。あのレベルを超えるのは。だからまぁ、VS日本人選手というところを超えて、これから世界の強豪外国人選手を相手に勝っていくという意味では、ホントに勝ったり負けたりが当然あるものと思います。でもその中で、そのデカい一勝を、逃げないでチャレンジして獲らなければと思ってます。

では、昨年12月のディファ有明大会以来、試合からちょっと遠ざかっている佐々木選手、山宮選手に関してお聞きします。菊田選手からご覧になって、最近の両選手の様子はいかがですか? まずは佐々木選手から。
菊田早苗:あの〜、前よりも更にいろいろ考えて、練習を真面目にやるようになりましたね。寝技の練習とか、何々の練習と言ったことじゃなくて、肉体的なものに関しても、例えば栄養面から考えたり、いろいろ取り入れてやってたりしてて。そういう姿勢がすごい出てますね。だから「何か変わるきっかけがあれば」って思ってやってると思いますけど、あとはまぁ、試合で勝てば、また変わると思います。

佐々木選手の精神的な部分に関してはいかがですか?
菊田早苗:今は試合がないので練習を楽しくこなしてるって感じだと思いますけど、次の試合はものすごく緊張すると思います。結局、なかなか勝てなくて、自分で気持ちを入れ替えた後の一発目になる試合だから、それはもう全て答えが出てしまいますよね。これはある意味ものすごい緊張感の中での試合になるんじゃないかなと僕は思ってます。すごいポイントになる試合ですよね。

山宮選手の方はいかがですか?
菊田早苗:非常に、全体的に通して良くなってると思いますね。

肉体的な調子の方はいかかですか? 昨年12月の試合前に肋骨を痛めて、更に試合で拳をケガしたと聞いています?
菊田早苗:ん〜、良い感じで回復してると思いますけどね。

菊田選手からご覧になって、パンクラスismにいた頃の山宮選手と、GRABAKAに移籍してから4ヶ月が経った今の山宮選手では、何が一番変わったように見えますか?
菊田早苗:多分・・・練習場所が変わって、新鮮な気持ちでやれてるのとか、精神的な部分で新たな発見があったりだとか・・・何かこう、格闘技がまた新たに楽しくできているらしいので、そこがやっぱり一番デカいんじゃないかなと思いますけどね。楽しくやれるものはやっぱり伸びもあるし、それが試合でも出てくると思うので、そういう意味では勝手にすごい期待してますね(笑)。何かこれまでと違う山宮恵一郎っていうのが見れるんじゃないかなと。

わかりました。では、菊田選手ご自身の今度の試合、4/23(金)後楽園ホール大会でのVSキース・ロッケル(チーム・エリート)戦に関して。
菊田早苗:まぁ、正直言うと、相手はハッキリ言って強いと思うんです。僕自身はそう見てるんですよ。勝率(13戦10勝2敗1分け)も良いし、負けた試合にしても、何か全然途中まで普通に勝ってるんだけど、最後で逆転負けみたいな、ちょっと今いち波に乗り切れない選手なんだけど、実力は十分にあるっていう。だから、復帰戦になりますけど楽な相手じゃないなって正直思いますね。まぁ、復帰戦だろうが何だろうが、これから相手はどんどん凄くなっていくので、もう本当に良い試合を見せたいっていうだけですね。

あの〜、これはいろいろなところで菊田選手がお話ししてることなんですが、やはりもう一度近藤選手と対戦したいと。そういうお気持ちの中で、3/29後楽園ホール大会での近藤選手の試合(VSスィーブ・ヒース戦)、また、昨年大晦日の『PRIDE男祭り』でのVSマリオ・スペーヒー戦というのは、菊田選手の中で刺激になったりしました?
菊田早苗:いや、あんまり刺激ってほどのものにはなってないですね。ある部分認めてますからね、やっぱり。これがまた違う選手だったら、「凄いな」とか、「何かうらやましいな」とかっていうのがあるかも知れないですけど、この間対戦した時の負け(昨年11月・両国大会)で、マリオ・スペーヒーとの試合も「勝てるんじゃないか」って思ったところもあったし。だから・・・当然じゃないですかね。今、ノってる時期で、ああいうふうに結果が出てるのは。そういう波っていうのが、僕なんかでも、良い時があったり、悪い年があったり、いろいろあるんですけどね。ん〜、本当にそういうのを平均して上げていきたいですよね。

では、今回のVSキース・ロッケル戦ですけど、ご覧になる方それぞれが、菊田選手に対してのテーマを持って試合をご覧になると思いますが、その主役である菊田選手ご自身にとっては、どのようなテーマを持って臨むことになるのでしょう? 先ほど「肉体的には復帰戦じゃないけど、精神的には復帰戦みたいなもの」っておっしゃってましたけど。
菊田早苗:いや、もちろん一本勝ちっていうのがあるんですけど、それよりも・・・あっち(キース・ロッケル)も寝技が得意らしいんですよね。何かこう、技の応酬じゃないですけど・・・後楽園ホールで、菊田の試合ではこういうのが観れるんだっていうのを見せたいですね。一本勝ち云々というよりも・・・もちろん一本勝ちにこしたことはないんですけど、それが判定勝ちになろうが引き分けになろうが、十分に自分のポテンシャル、関節技、寝技に関して、それを出し切りたいですよね。だからすごい良い内容の試合にしたいですね。それができそうな気がします。今回。

4/23後楽園ホール大会以降に関してはどうお考えですか?
菊田早苗:ん〜まだわかんないですね。ただこれからは、時期を決めて試合するとか、この試合が終わったら次はこうしようとか考えるんじゃなくて、出場したいと思ったその時に試合をやっていこうと思ってます。だから今後は試合を終えたら一回リセットですね。暫くリセット。その次は2ヶ月後かも知れないし、半年後かも知れない。本当に出たいと思った試合に出ていこうと。自分のコンディションが一番良くて、対戦したい相手が来た時に(試合に)出ていこうかなって思ってますね。

それは闘う場所には拘らない?
菊田早苗:もちろん、もちろん。そういう方が(試合に対して)一番魂が入るのかなって思いますね。

わかりました。では、ガラッと話題を変えて。最近、『さんまのスーパーからくりTV』(TBS系列/毎週日曜日19:00〜放送)に度々出演してますけど、菊田選手が指導しているボビーさんは、格闘家としての能力、センスはどうなんでしょう?
菊田早苗:凄いですね、ホントに。

番組の中で「試合に出ませんか?」って誘ってました。
菊田早苗:いや、ああいう肉体的に能力の高い人っていうのもなかなかいないので、「どうかな?」って思ったんですけどね。やっぱり凄かったです。彼は。当然プロでやっていけるだけの素質、潜在能力は持ってますよね。まぁ、どのレベルまでいけるのか?ってところまではまだわからないですけど。でも、こっちはああいう人が頑張ってる姿に刺激を受けますね。

日曜日の19:00、まさにゴールデンタイムで、10年以上放送が続いている番組の中で、あそこまで大きく菊田選手、そしてGRABAKAが取り上げられているということに関してはいかがですか?
菊田早苗:まぁ、すごくラッキーだったと思いますね。ラッキーだったけど、まぁ、僕らは芸能の方ではないので・・・TVは・・・まぁ、こっちが一生懸命プッシュしても入れるわけではないので、本当にラッキーだったなって。すごい良い番組と巡り合えたなって感じですね。

わかりました。では、これで最後ですが、5ヶ月ぶりの試合、復帰戦ということで、本当に菊田選手を待ちわびてらっしゃった方がたくさんいると思います。菊田選手を応援しているファンの皆さん、そしてGRABAKAファンの皆さんへメッセージをお願いします。
菊田早苗:え〜、もう次に試合をやったら、今度はいつ試合に出るかわからないくらいの・・・年齢的に考えても、1試合1試合に対して今までにないくらいの力を入れていきますので、ファンの皆さんには是非会場に足を運んでいただきたいと思います。応援宜しくお願いします。

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