5月28日(金)後楽園ホール大会のセミファイナルで、昨年12月のVSデビッド・テレル(シーザー・グレイシー・アカデミー)戦以来、5ヶ月ぶりの試合出場が決定している佐々木選手。対戦相手には、現在パンクラスで2戦2勝の内藤征弥選手(A-3)が決まりましたが、今回のVS内藤戦のお話をうかがう前に、先ずは欠場していた5ヶ月間のことをお聞きしたいと思います。2001年2月(後楽園ホール)のパンクラス初参戦以降、5ヶ月間の欠場というのはこれまでなかったと思いますが、この5ヶ月間を佐々木選手はどのように過ごしてきたのでしょうか?
佐々木有生:・・・何でしょうね?(苦笑)。練習したり・・・普通に趣味を楽しんだり・・・。いろいろしてまし たけど。ん〜、世の中強いヤツはいっぱいいるんだな〜って感心してたかな(笑)。

いろんなことを考えるには十分な時間だったと思いますが、何を一番考えてました?
佐々木有生:ん〜、疲れてたんだなってすごい思いました。精神的にすごい疲れてたんだなって感じましたね。何か・・・自分を動かすものがないんだなって。そういうのはすごい感じましたけど。

その、自分を動かすものっていうのは見つかりました?
佐々木有生:ん〜、何て言うんだろう・・・。プライドじゃないですかね。負けたからプライドを失うとか、勝ったからどうだってことじゃなくて、自分がそこに行き着くまで、どういう気持ちで行くのかっていう。勝つ負けるの前に、心の準備っていうか・・・。その準備ができて、それでもダメならしょうがないじゃないですか。そういう誇りみたいなものを失くしたっていうか・・・。ずっと。でも、これじゃぁ人間いかんだろうと。何をするにしてもいかんだろうと思ったから。それじゃないですかね。あとは・・・ん〜、誇りと、ただ強くなりたいなって思ったからじゃないですかね。それだけじゃないですか。自分を動かしてるものは。

この5ヶ月間で、何が一番ご自分の中で良かったと思いますか?
佐々木有生:(GRABAKAの)みんながいてくれたことですね。みんながいてくれたことと、いろんな人と出会っていろんな話をして、いろんなことを考えて。そういうのがこの5ヶ月間、すごくありがたかったですね。

佐々木選手が欠場している間にも、チームメイトのGRABAKAの選手たちはそれぞれが様々な闘いに臨んできました。先ずは2月に三崎(和雄)選手が國奥麒樹真選手(パンクラスism)を破り、そのすぐ後に、郷野(聡寛)選手が『PRIDE 武士道』さんに出場。3月には佐藤光芳選手が復帰して、そして4月には菊田(早苗)選手が昨年11月のVS近藤有己(パンクラスism)戦以来の試合に臨みました。そういうチームメイトの闘いを目の前でご覧になってきて、どういうことを感じたり考えたりしました?
佐々木有生:そうですね・・・郷野さんの場合は、とにかく大変だろうなって思いましたね。大変だろうなっていうか・・・精神的にすごい大変だろうなって。もちろん全部がわかるわけじゃないですけど・・・。三崎君の場合は、國奥選手に勝つっていうのは、現時点の二人の力量から言ったら当たり前だろうなって。そう思ってますし。それで今度は三崎君が『PRIDE 武士道』に出ることになって。菊田さんは相手がすごい強かったし・・・強かったっていうのと、あとは菊田さんが疲れてるなっていうのを感じましたね。ん〜、(GRABAKAの)流れ的には良いと思いますけどね。みんなまた戻って来て。GRABAKAの良いところは、GRABAKAって名前でいけるところがある。誰々っていうんじゃなくて。それは強みですよね。だから・・・まぁ、まだまだですけど、今度三崎君が『PRIDE 武士道』に出ることによって、GRABAKAっていう名前が大きなところに出る。そこで勝つことはもちろん大事なことですけど。まぁ、GRABAKAの流れ的には悪くないと思います。これは僕の考え方ですけど、(石川)英司だって、『PRIDE 武士道』に出たいって言ったら、可能性はあったと思うんですよ。出場できる資格は今でも十分あると思います。十分勝てると思いますし。まぁ、英司の良いところは、一本勝ちできなくても、例え判定勝ちでも、人に魅せれるっていうか・・・一生懸命さっていうか、そういう気持ちが見える。だからすごい良い試合をするじゃないですか。それが『PRIDE 武士道』のリングで通用するのか、魅せることができのるかはまだわからないですけど、でも実力から言ったら出場してもおかしくないと思います。だからホントに、みんなどんどんどんどん出て行けば良いと思いますし、郷野さんだってまたチャンスがあればすぐにでも出て行けば良い。負けたからってみんな悲観的になることもないし。こいつには強くて、こいつにはダメって感じで、じゃんけんの法則みたいなものがあると思うんですよ。だから『PRIDE 武士道』っていう、日本人選手がメインのリングに上がるチャンスがあるのなら、そこで自分を磨いていけば良いんじゃないですか。そういう中で、(GRABAKAの選手の中でも)パンクラスを主戦場にしていく選手もいれば、『PRIDE 武士道』を主戦場にしていく選手もいて。もっと選手が欲を出していっても良いと思いますね。そうすることでGRABAKAって名前がもっともっといろいろなところに出るし、それで選手それぞれがちゃんと自立していけば良いんじゃないかって僕は思ってますけど。何かそういう方向性が見えてきたっていうか。この5ヶ月間ですごい動いたんじゃないかなって思いますね。

佐々木選手の周りで起こったいろいろな動きの中で、何が一番刺激になりました?
佐々木有生:ん〜、何だろう・・・。一昨年(11月)、僕は美濃輪(育久)選手に負けたじゃないですか。その前のVSアレックス・スティーブリング戦(9月)に勝って、その後すぐに美濃輪選手と対戦して負けたじゃないですか。今でも「あの試合はドローだよ」って言ってくれる人もいるんですけど、自分の中では勝ちきれなかったっていう時点でもう負けで。その後(12月)に『PRIDE』に出て、ホドリゴ・グレイシー(ヘンゾ・グレイシー柔術アカデミー)に負けて。次にヒカルド・アルメイダ(ヘンゾ・グレイシー柔術アカデミー)に負けて。その後も中途半端に負けて。それで止めがデビッド・テレルで。どうすれば良いのかっていうのがわからなくなったんですよね。自分をどこに持って行けば良いのか? どうしたら強くなれるのか? そういう状況の中で、今年に入っていろんな人に出会って、練習方法とかをいろいろ変えて。それで、まだ強くなれるんだなっていうのがわかって。屈辱・・・屈辱って言ったらおかしいですけど、それをまだ返せるんだなって。見返せるんだなって。まだ強くなれるんだなって思ったことが起爆剤っていうか。人がどうのこうの、人にどう見られてるとかっていうのは、自分の中でもう終わっちゃったんですよね。確かにお客さんが大事だっていうのはもちろんわかってますけど。実力があって、その上でお客さんに魅せれる人はそりゃ凄いと思います。そういう選手は羨ましいですけど、でも、人それぞれ違うんですよね。肉体的に強い人もいれば弱い人もいるし。僕なんかは肉体的に強い方ではないし、特別テクニックがあるわけでもない。多分、気持ちで闘うタイプで。そうしたら、気持ちが整わないとやっぱり勝てないですよね。だから気持ちを作ることが大事で。何よりも自分ができてはじめてそれを観た人が「良いな」って言ってくれる試合じゃないと。ん〜、だからホントに気持ちで闘うような試合をしていきたいなって。同じ負けるにしても、もっと気持ちのある試合をして負けるんだったらしょうがないなって思えるけど・・・。自分の納得度っていうか、納得できる試合をしたいなって。勝つ負けるより。で、負けたら負けたで次どうすればいいかって考えて。そうやって強くなっていきたいなっていうのが、今の自分の起爆剤というか。あとは、日々自分がどれだけきちんとできるか。生き方ですね。そういうふうになってきましたね。

わかりました。では、今までお話しいただいたような、復活のための5ヶ月間だったわけですが、いよいよ5/28後楽園ホール大会が近づいてきました。試合までもう10日を切っている現在、体調的にはいかがですか?
佐々木有生:普通ですね。でも大丈夫ですよ。あとは疲れをどれだけちゃんと抜けるか。コンディションですね。コンディションが良ければ大丈夫じゃないかなって思ってます。

対戦相手の内藤征弥選手に関してお聞きしていきますが、内藤選手は前回の試合(3月・後楽園ホール)で佐藤光芳選手に一本勝ちしています。その内藤選手との試合が決定したことを聞いた時の心境っていかがでした?
佐々木有生:佐藤君のセコンドに僕は付いていたので、「あぁ、あの選手か」って。3月の時は、良い選手だなって思いましたね。身体も強そうだし。

内藤選手の闘い方をご覧になって、どのような印象をお持ちですか?
佐々木有生:ん〜、いや、良いと思いますけどね。綺麗な闘い方をするなって僕は思いますね。

今回のVS内藤戦ですが、佐々木選手ご本人的にはどのようなテーマを持って臨む試合になるのでしょうか?
佐々木有生:自分の中では復帰戦ってイメージはあまりないですね。ランキングに関してもあんまり気にしてないですし。気持ち的には、多分自分の方がフレッシュな感じだと思います。相手は僕を喰ってやろうって、それが例えばランキングだったり、自信だったりするんでしょうけど。だからガツガツくるのかなとも思いますけど、僕は自分のやれることをいかにやるか。それがテーマですね。誰がどうこうじゃなくて、自分がどうあるべきかっていう、そっちの方がすごい大事ですね。試合中に、自分が自分に対していかにきちんとできるか。それができれば、自分が勝ち名乗りを受けてるんじゃないかって思います。それができなかった時は負けるんじゃないかって。そういう意識ですね。面子とか、そういうのはもうないんですよ。今ランキング7位だとか、ランカーで何年もやってきただとか、そういう面子はもうないですね。僕にとってそれは、こびり付いている垢みたいなものですね。そうじゃなくて、ただ、自分にきちっとできるかっていう方がすごい大事です。その上で勝ちたいなとはもちろん思ってます。勝ちたいなっていうか・・・きちっきちっとやりたいなっていう。例え判定勝ちだとしても、それが自分で納得できるものであれば良いかなと。自分がちゃんとすることで相手を完封する。それが例え判定での勝ち名乗りだとしても、自分の中では(相手を)倒したっていうイメージがあるんです。先ず今はそれで良いと思ってます。

わかりました。では、今回のVS内藤戦の先のお話になりますが、今後の目標なり、展望なり、何か現時点で具体的に考えていることってありますか?
佐々木有生:ん〜、今は特にないですね。まぁ、敢えて言うなら、もうちょっと強くなりたいってことですね。みんな強いんですよ(苦笑)。練習してて。だからもっと強くなりたいですね。

誰々と対戦したい、何処何処に出たいっていう希望はない?
佐々木有生:そうですね。ん〜、まぁ、年末ぐらいに何処か大きいところに出れれば良いかなって、そういうイメージはありますけど。ただ、自分が納得した形で、これぐらいならやれるだろうっていうものがあった上で出たいですね。

わかりました。では、佐々木選手ご自身の話題からちょっと離れて、チームメイト二人のお話を。先ずは、4/23『PRIDE 武士道〜其の参〜』への出場が決定している三崎選手に関して。佐々木選手からご覧になって、現在の三崎選手の様子はいかがですか?
佐々木有生:調子は良いんじゃないですかね。今は疲れが溜まってるから、これからきちんと休んで。元々ポテンシャルも高いし、ミドルで、あの階級では日本でも一、二番って感じじゃないですか。だから、世界でも十分やっていけるレベルにあると思うから、今回勝っても「やっぱり勝ったか」って。逆に負けたら「あぁ、負けちゃったんだ」って、それぐらいの感じじゃないですかね。アルメイダにしたって、ジェイク・シールズ(シーザー・グレイシー・アカデミー)にしたって、ミドルではトップの選手で、そういう選手と闘ってきてますから。だから、例えば『U.F.C.』に出て行っても全然おかしくないですし、そこでチャンピオンになっても「あぁ、やっぱりか」って。なれなかったとしても、もう一つ上のレベルがいるんだなって、あとはそのワンステップだけじゃないですか。そのワンステップを上がれば、目の前にもうベルトがあるっていう感じで。

今回の『PRIDE 武士道』出場にあたって、三崎選手に期待することって何かありますか?
佐々木有生:ん〜、期待とかじゃなくて、自分が持ってるものだとか、ポテンシャルだとかをとにかく全部出してきてほしいなって思いますね。後悔してほしくない。それぐらいですね。後悔しないように全部出してきてほしいなって。

では、今回の佐々木選手と同じく、5/28後楽園ホール大会で5ヶ月ぶりの試合に臨む山宮(恵一郎)選手に関して。佐々木選手からご覧になった現在の山宮選手はいかがですか?
佐々木有生:山宮さんは・・・ん〜、やっぱり凄いなって思いますね。GRABAKAに移籍してきて、今楽しいみたいですし。すごい吸収も早いし、身体もやっぱり強いから。あと、適応するのも早いですよね。だんだんだんだん強くなってきてますし。

そういう山宮選手に期待することって何でしょう?
佐々木有生:もっとアグレッシブで良いと思いますね。そんな簡単にはとられないと思うし。今の自分のポテンシャルでやれることをやれば全然勝てると思います。

わかりました。では、これで最後になりますが、佐々木選手の試合を楽しみにしていらっしゃる皆さん、佐々木選手を応援していらっしゃるファンの皆さんへメッセージをお願いします。
佐々木有生:ここ一年半ぐらい、みんなの期待に応えられないことがいっぱいあったので・・・ここでみんなの期待に応えられるかどうかはまだわからないですけど、まぁ、勝つ負けるじゃなくて、裏切らないような試合をしたいなと。そういうことを心がけて頑張りますので、応援よろしくお願いします。

佐々木有生選手database