第2試合 第2代ヘビー級王者決定トーナメント リザーバー戦 5分2ラウンド
×玉海力剛
(パンクラス チーム玉海力)
vs 三浦康彰
(禅道会広島支部)
1R 1:43、ギブアップ/腕十字固め
■ 玉海力剛(99.6kg) セコンド:小椋誠志、ジミー明成 /
■ 三浦康彰(96.9kg)
レフェリー:和田良覚

玉海力選手は肩肘そして目と、大きな怪我が続き、そこからの復帰戦です。三浦選手においては下から上がって来て、年も20才という事から、年齢的には親子対決に近いものがあります。そういった事から、玉海力選手がどの様に闘うか、凄く興味がありました。
私はこの場で玉海力選手への尊敬、試合への感銘を話していますが、勘違いしていただきたくないのは、年齢が高いからとか、そういう事ではありません。ここの所だけは皆さんに十分ご理解いただきたいと思います。色々な過去があり、年齢もあり、チャレンジをしていますが、年齢差がかなりある選手と、怪我を明けて、試合をするという設定自体が、どれ程大変かというのは、これを読んでいただいている皆さんが40才の壁を越えて来たらお分かりいただけると思います。今、分かれと言ってもそれは無理な話ですが、それはそれとし、一戦一戦の中で、玉海力選手の闘い方が少しずつ変わって来ています。

三浦選手は若さと、練習の量、試合を積んで来たところでの部分では物凄く畳み込みが上手でした。繰り返し首腕への攻めとパウンドを合わせて、極めに行く流れを作ったのは早かったですから、そういう部分への対応が一拍遅かったら、多分三浦選手は直ぐに決めていたと思います。玉海力選手はそれを少しずつ反応して、不器用な形ではあるけれども、三浦選手の攻撃を許さない様にして、もう少しで立ち上がれた、あと少しで体勢を入れ替えられたというところまで反応していました。三浦選手も技術が乏しく、掛ける事だけに夢中だったなら、それを許していたと思いますが、基本を持っている選手の様なので、しっかり対処していましたが、やはり玉海力選手の対処の変化は、見ていて凄く面白かったし、やはり彼が朝早く自分で道場の鍵を開け、最初は一人で黙々と体をほぐし、最後は声を荒げ気合を入れて練習するプロセスをたまに目にしますが、そういうものが、プロのリングなので勝負は重要ですが、こういう情報を知っていて、こういうベテランの試合を見るというのは、なかなか大きな大会では目にする事が出来ません。パンクラスのリングだからこそ、こういうマッチメークをしてもらえ、実に奥行きのある試合です。表面の勝負の部分も大切ですが、人間一人が色々な条件の中で、自己を変えて行く様を見られるというのは、実は格闘技、武道の本質で、強い弱い本質ではありません。

ぱっと強くなり、有名になり、芸能界や他のスポーツに転進する等も生き方ですが、それは武道家の生き方ではありません。良し悪しではなく、それはビジネスマンの生き方です。自分が出来る所まではやるんだという魂に従って、1分43秒で負けはしましたが、その為に玉海力選手はどれ位努力をしたのかという様、行間を見て欲しいです。これで総合三連敗となり、悔しい思いはされていると思いますが、焦るでも、捨て鉢になるでも無く、また朝が来たら、鍵を開け、一人道場で練習を始める、こういう生き方が滲み出る様な試合というものを、ちょっと心を開放してもらったら色々な物が感じられると思います。
そして三浦選手は素晴らしかったし、良い勝ちっぷりでした。

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