パンクラス大阪大会(4月10日・梅田ステラホール)を見た。出場選手の怪我などで本戦はわずか5試合となったが、稲垣組の頑張りが大会に厚みをもたらした。特に藤本直治、武重賢司、前田吉朗の3人そろっての勝利は大阪のファンを喜ばせた。
 なかでも、武重は感動的だった。武重はデビュー戦、第2戦とKO負け。それも2度までも担架での退場だった。それから1年以上のブランクを経ての復帰戦(今年2月『ネオブラッド・トーナメント〜ライト級〜』)では三角絞めで一本負け。今大会は絶対に負けられなかった。

 武重は、最高の指導者・稲垣克臣のもと、仲間とともに濃密な時間を重ねてきた。稲垣は、非常に短い言葉で選手たちを的確に指導する。それが、稲垣の人間的魅力とあいまって、選手たちは大きな信頼を抱く。やんちゃな選手たちも、稲垣の言うことだけは素直に聞く。稲垣は、選手たちを見守る父親のような存在なのだ。
 稲垣は、稲垣組の選手が試合に出る時、必ずセコンドにつく。練習の時と同じように、よく通る力強い声でアドバイスを送る。その声を聞いて選手が動く。「その通りにやれば勝てるんだ」と信じて。

 1ラウンド1分53秒、KO勝ちした武重に真っ先に飛びつき、号泣する藤原大地。駆け寄る仲間たち。稲垣の嬉しそうな顔。その光景を見て「友情・努力・勝利」という、まるで少年漫画のような言葉が浮かんできた。
 武重が負けられなかったのは、自分のためだけではなかっただろう。苦楽をともにしてきた仲間のためであり、稲垣の喜ぶ姿を見たかったからだ。

 人は一人では生きられない。稲垣組を見ていると、そんな基本的なことを改めて思わずにいられない。好きなことを見つけ、信頼できる仲間たちと、ひたすら情熱を燃やし続ける・・・。単純だが難しい、でもなんと素敵なことか。

 5月22日、前田が『PRIDE 武士道〜其の七〜」(東京・有明コロシアム)に出陣する。「まっすぐに、ひたすらに」。今度は『PRIDE』のリングで、稲垣組スピリットを見せてほしい。



Photo:M.GIGIE