2月4日(金)の後楽園ホール大会でパンクラスに初参戦。謙吾選手(パンクラスism)とのヘビー級戦に臨み、大逆転勝利で衝撃のパンクラス・デビューを飾った桜木選手。先ずは、そのvs謙吾戦をご自分なりに振り返っていただけますか?
桜木裕司:まだ総合の試合数自体が少なくて、総合のためにキックの試合をやってきたのに、逆にキックをしっかり勉強しようとしたせいで、いざ総合のリングに上がった時にポッと抜けてたところがあって。あと、初めて寝かされたっていう。これまで試合で寝かされたことがなかったので、一瞬戸惑いましたね。寝かされた時に、「あれ!? 何するんだっけ?」って感じで全部飛んじゃって(苦笑)。

今のお話は、桜木選手的に反省点になると思いますが、逆に良かった点というのはありますか?
桜木裕司:いや〜、良かった点ということでは・・・まぁ、諦めなかったことぐらいですよね(苦笑)。やっぱり田中先生(※田中健一氏/「格闘結社田中塾」代表師範)が付いていたのもありましたし、今まで強いロシア人選手と、無名の強いロシア人選手と地方を一緒に回って、真剣勝負でず〜っと試合をやってきて、それで勝っても勝っても見向きもされないで(苦笑)。でも、間違ったことはやってないっていう自信があったので、それを通すためには、ここで諦めてたら今までの苦労が水の泡になるし、うちの館長の佐山 聡を裏切ることになるので、それだけは絶対に、佐山 聡の弟子が自分から諦めるっていうことは絶対に有り得ないと思って。でも、やっぱり人間なので、途中意思が弱くなる部分もありましたけど、そこはやっぱり田中先生をセコンドに選んで良かったなと思ってます。

桜木選手は掣圏会館さんの師範代を務めていますので、やっぱり「看板を背負って」というお気持ちがあったと思いますが、その辺でのプレッシャーはいかがでした?
桜木裕司:以前、瓜田さんが負けてますからね(2004年5月・後楽園ホール/瓜田幸造vs山宮恵一郎戦)・・・。僕が総合の試合をそんなにやってないからと言っても、やっぱり掣圏道は総合格闘技でも通用すると謳ってますから、そういう中で僕まで負けたらっていう・・・。まぁ、勝負の世界だからこればっかりは何とも言えないんですけどね。でも、今の格闘技界もそうなんですが、個人個人、個の時代だ何だって言われてるじゃないですか。僕らはそれに対して、逆に団体を背負って闘うことに誇りがあるし、個人に戻るとやっぱり弱い部分があると思うので、背負うことによって自分の持ってる力以上のものが出せるんだって。だから僕らなんかからすると、個人個人っていうのがお洒落でかっこ良いものだっていう世界になって、自分たちの利益だけを求めて動いていく人間がいる中で、逆に僕らはそういうものを背負って大事にしていかなきゃなって思いますね。それはでも、人それぞれの価値観があるから、別にそれをよそに押し付けるつもりもないし。ただ、守っていかなきゃいけないものっていうのがある。それを守ることによって、自分の力以上のものが出ると思ってますから。

では、2月4日の後楽園ホール大会で初めてパンクラスマットに上がった桜木選手ですが、会場の雰囲気とか、他の選手の試合とか、桜木選手にはどのように映りました?
桜木裕司:いや〜、でも、他の選手の試合は観てなかったので何とも言えないんですけど・・・(苦笑)。会場の雰囲気ということでは、やっぱりお客さんが入ってるってことは嬉しいですよね。あえて表舞台に出て勝つことによって、僕らの主義主張っていうのを、世間というフィルターを通して「どうなんだ?」って投げかけていきたいですから。だから、パンクラスの会場には色んなタイプのお客さんが来てると思いますし、地上波で流れている『K-1』や『PRIDE』とかよりも、本当に格闘技が好きで来ているお客さんが多いと思うので、先ずはそこから入って行って、次にまだその先にある俗世間、ちょっと大き過ぎますけど(苦笑)、行けるところまで行ってそれを伝えていければ良いかなと思ってます。

vs謙吾戦を終えての、周りの皆さんの反応っていかがでした?
桜木裕司:一般の人たち、格闘技をやってない人たちは、第三者として観てたら面白かったって言うんですけど、でも、格闘技をやってる人たちからは「あんなんじゃダメだよ」って。「今回は勝ったけど、あんなんじゃまだ上には行けないから、もっともっと頑張らないと」って感じです。




わかりました。では、3月6日(日)横浜文化体育館大会でのvs郷野聡寛(パンクラスGRABAKA)戦についてうかがいます。今回のvs郷野戦は、パンクラスのリングでありながら、【全日本キックボクシング連盟公式試合】としてキックボクシングのルールで行われます。そこで先ずは、キックルールでのvs郷野聡寛戦が決定したことを聞いた時の心境はいかがでした?
桜木裕司:いや、もう、これは僕が悪いんですけど、去年の年末に滝川選手と僕が対戦して(※昨年12月の『全日本キックボクシング』後楽園ホール大会「藤原祭り」でのvs滝川リョウ戦)、そこで勝っていれば、1月4日(『全日本キックボクシング』後楽園ホール大会)には僕が郷野選手とヘビー級タイトルへの挑戦権を賭けて闘うはずだったんですよね。僕もその前にチャンピオン(前王者の西田和嗣選手)には勝ってますので。でも、僕が滝川選手に負けて、勝った滝川選手もダメージが残ってて試合が出来ないということで、そこで郷野選手がコンボイ選手(※コンボイ山下選手)と対戦して、トントンとチャンピオンになって。やっぱり悔しい部分はありましたけど・・・。確かに郷野選手はすごく強いと思いますよ。でも、逆に本当の意味で・・・もう、西田選手には一回勝ってますし、西田選手は郷野選手に負けた以上ベルトもないですし、それで興味もあまり沸いてこないですけど、逆に郷野選手がチャンピオンになったことで、あの時(昨年12月の「藤原祭り」)負けたのが良いか悪いかはわかりませんが(苦笑)、今、更におもしろい展開になってきたなって感じはしています。

郷野選手の『全日本キック』さんでの2試合はご覧になってますか?
桜木裕司:観ました観ました。

闘い方とか、どのような印象をお持ちになりました?
桜木裕司:やっぱり動きが普通のキックボクサーとは違いますよね。下手な総合の選手が突発的に出す動きじゃなくて、いろんな部分をちゃんと計算した上で、あの構えからああいう打撃が出せるっていう。まぁ、僕が言うのも変ですけど(苦笑)、すごく才能のある選手だなって思います。

2月4日にパンクラスで総合の試合に出場して、それから僅か1ヶ月での試合になりますが、コンディション的にはいかがですか?
桜木裕司:コンディションってことではみんな良く言うことですけど、万全の状態でリングに上がってる選手は少ないと思いますし、逆に・・・2年前ぐらいですかね、1ヶ月で真剣勝負を5試合したことがあって。それまでは藤原先生(藤原敏男氏)の1ヶ月で3試合っていうのが記録だったんですけど、僕らが1ヶ月で5試合っていうのをやって。その時は、館長にいきなり「試合をやれ」って言われて、4日で3試合の時もあったので、さすがに「ど〜なるのかな?」って思いましたけど、そこでホントの必死の力、非科学的なものかも知れないですけど、館長に本当の心の部分を試されて。まぁ、一般の常識っていうものを考えてたら、それはもう越えられないし、あえてそこに試練を与えてもらってダメだったらどこかでまたダメになるだろうし、ここで生き残れば「コイツはまだやれるかも」って、ある意味ふるいにかけられた部分もあったので。やっぱりそういうのを一回経験したら、恐いものが段々なくなってきたっていう感じですね。だから連戦連戦っていうのは、僕らにとっては嬉しいことって言うか、試合が無いよりは有る方が・・・。練習でも強くなれますけど、何よりやっぱり試合で一番強くなるっていうのが僕の中の考えなので。だから経験をいっぱい積みたいし、強いと言われる人と闘えるのであれば、ドンドンドンドン闘っていきたいし。そのためには勝っていかないといけないし。この間(2月4日)諦めずに頑張ったお陰で、今回郷野選手と対戦出来るという機会をもらった以上、これを絶対的に活かして。別に僕はキックボクサーじゃなくて、総合でもキックでも両方で闘っていけますから。総合では、この間のパンクラスで不甲斐ない試合をしてしまって、あれが桜木裕司って思われてるかも知れないですけど、持ってたものをほとんど出せなかったという部分で、僕の総合でのスキルというものがどれだけ通用するのかっていう・・・。元々極真空手から始めて、その時も試合に勝つことより、実戦実戦実戦って、常にそれだけを頭で考えてやってきたので。その上で今、掣圏道、掣圏真陰流っていうものを練習してて、それが総合の、実戦の世界で通用するのかどうかっていうのを・・・まぁ、理論的には多分通用するっていうのはわかってるんですが、要はその部分を誰が体現していくか?っていうのが問題であって、僕に今その機会がある以上は、それで佐山聡の理論は正しいってことを体現していければ良いなと思いますし、それが僕の使命かなと思っているので。うちの先生に付いた以上は。はい。




2月のvs謙吾戦では、桜木選手のその「諦めない」という気持ちが非常に際立った試合だったと思いますが、郷野選手から「根性勝負には持ち込ませない」という感じの発言もありました。そこでお話し出来る範囲で結構ですので、vs郷野戦に桜木選手はどのような試合展開を描いていますか?
桜木裕司:郷野選手のことを僕はかなり昔から見ていて、どちらかと言えば好きなタイプの選手なんですよね。それに先を走っている総合の先輩として、根性勝負どうこうって言われるのは仕方ないと思いますし、僕もまだまだ技術が足りない部分があるので・・・。だから・・・何をやるかって考える方が失礼かなと。今持っている力を全部出して、「郷野選手、これでど〜ですか?」、「僕はまだまだあなたに届きませんか?」っていう部分を出せれば、そこでやっぱり試してみたいっていう。実際に試合の中で100%は出せないかも知れないですけど、いざその本番の中でどれだけ出せるか? 郷野選手に対してどれだけ出して、それがどこまで通用するのかっていうのを、僕が逆に試したいっていう。根性勝負どうこうっていうのはその時の流れであって、あれをするこれをするっていうのはまだ僕にはないと思ってるので。だからあるものは全部出して、気持ちも全て、技も全て、持ってるものを「郷野選手、これでど〜ですか?」って感じで投げかけていきたいなと思っています。その上で勝てれば一番良いかなと。まぁ、勝負の世界ですから、闘う以上は勝つことしか考えてないですけどね。

では、今お話しいただいたことと被ってしまうかも知れませんが、vs郷野戦での桜木選手の中にあるテーマとはどういうものでしょうか?
桜木裕司:そ〜ですね・・・まぁ、大きい会場だし、お客さんもいっぱい観てるだろうし、その中で、掣圏真陰流の桜木裕司、佐山 聡の弟子の桜木裕司がどう映るのか?っていうところで、お客さんとの闘いでもあるし、世間との闘いでもあるし。そしてそれの始まりでもあるし。僕の個人的な感情としては、郷野選手にどこまで通用するのか?っていうのがすごい楽しみと言うか・・・。郷野選手のようなタイプとは闘ったことがないですし。ロシアの選手も、テクニックと言うより、ハートでくる、力でくる選手が多かったので、こういう言い方は失礼かも知れないですが、ものすごい楽しみなんですよね。やっぱり。格闘技をやってる以上、やっぱり強い人間と闘ってみたいし、GRABAKAの郷野選手がどれだけ強いのか? キックルールでどれだけ強いのか?っていうのを体感してみたいし。自分の中でやってきたことが間違ってないっていうところで、それを出してぶつけていきたいですね。

わかりました。では、これで最後です。今回の桜木選手の試合を楽しみにしている皆さん、そして桜木選手を応援しているファンの皆さんにメッセージをお願いします。
桜木裕司:今回、パンクラス2戦目にして、大きい会場のメインに出させていただけることに感謝していますし、恥ずかしくない試合をして、何より自分の信念というものを貫き通せるように頑張っていきたいと思います。応戦よろしくお願いします。押忍!

桜木裕司選手database