メインイベントに登場し、佐藤光留選手と対戦した松本天心さんは、サンボの世界では数々の実績を残されていますが、総合ルールでは2戦目となる試合でした。SKアブソリュートのリーダーである松本氏が参戦していただけるというだけで、心に染みる物があり、感動しました。そして大変嬉しくも思いました。試合は1R 2:43、TKO(レフェリーストップ)/スリーパーホールドで佐藤光留選手の勝利でしたが、SKアブソリュートのリーダーという立場であり、総合ルール2戦目というリスクもありながら、そのチャレンジスピリッツ、そして一人の人間の生き模様に感動しました。その前に出る生き様が、勝負を超えたところにある、真の人としての強さではないでしょうか。プラス・マイナス、勝つ・負ける、といった、平面的な部分だけで物事を判断するのではなく、いわゆる人間模様の行間を読んでいただけたらと思います。

それに併せて、7月の横浜文化体育館大会で、右腕を脱臼してしまった玉海力さんは、機能面も含め、本当に綺麗に治癒しつつあります。指示通りの事を、誰一人いない道場で、真剣にこつこつと積み重ねています。玉海力さんも自分が若ければ、どうだかわからないとは言ってはいましたが、若い選手であれば、すこし良くなり、もう大丈夫だろうという思いから、誘惑に負け指示以外の事をして、反って回復を遅らせてしまうといった事もあるものです。玉海力さんの様な大人は、何よりも心の強さがあり、誘惑には乗らず、こつこつと努力を積み重ねていきます。
試合がいつ決まるかもわからない状態で、今、この場所で出来る限りの事をしています。そしてその点が線として繋がった時に、プラスではなく、何倍にもなった視界で物事を望む事が出来るのではないでしょうか。線が初めからあるのではなく、点が線となる事を、ご理解いただけたらと願います。これは格闘技やスポーツとかではなく、どんな世界にも、共通している事です。

本人は「努力は人に見せるものではありませんから」と口数少なく謙虚に語っていましたが、正しい影の努力は人前に出るべきものではないかと思います。 パンクラスや他のメジャー団体も含め、練習をしているか否かという、そういう問題ではなく、心に人としての良い感化を与える、ある種のエネルギーの様なものが抜け落ちているのでは、と思います。その様なエネルギーを放つ人間、そしてそのエネルギーが牽引する力となり、周りを感化するのが本来のリーダーシップでは無いでしょうか。こういう言い方をしては失礼にはあたりますが、それがマイナー的な存在のチームやグループには流れていて、それが素晴らしい強さ、力となり、リングの上で輝いている様に思います。そんな事を感じさせていただいた、松本天心さんの熊本大会参戦でした。