前回の試合、1月の後楽園ホール大会では、当時ランキング3位の長岡弘樹選手(ロデオ・スタイル)と対戦し、判定3-0での勝利をおさめました。そしてその後に発表された最新ランキング(2/3付)で、ランキング5位の座をGETした北岡選手ですが、4/12(土)後楽園ホール大会でのVS和田拓也(SKアブソリュート)戦のお話をうかがう前に、まずはそのVS長岡戦を振り返っていただけますか?
北岡悟:ん〜そうですね、勝った時はすごい嬉しかったんですけど、まぁ、もう3ヶ月経って思うのは、自分が強いっていうんじゃなくて、長岡選手よりたまたま力が上回っただけかなって。そんな感じはしますね。大きな目で見れば、別に何てことはないことかなと。何か大きな事をやったわけでもないので。まぁ、「小さなことからコツコツと」みたいな(笑)。でも、すごい良かったこともあるんで。あと、(試合の)感触として良かったのは、相手の気持ちをヘコましたというのが感触としてあったので、それがもう、気持ち良かったですね。快感みたいな感じがしました(笑)。

それは試合中に感じたことですか?
北岡悟:そうですね。試合中に感じました。それはVS港 太郎戦(2002年10月・後楽園ホール)ではできなかったことだったんで、それができたのがすごい良かったですね。でもまぁ、それができたらかと言って、どうなんだろう?とは思いますけど、それが毎回できたらどんなに良いんだろうとも思いますね。ハイ。

作戦通りの試合になりました?
北岡悟:いや、意外とそうでもないですね。最初はもっと打撃でいこうと思ったんですけど、試合前に裏の方で美濃輪さんと準備(アップ)をしてたら、なぜがタックルの打ち込みをやってしまってたんですね。、なんで、体がタックルを打ちたがってたのかな(笑)って思って。それで1ラウンド目の初っ端にポンッってタックルに入れて、「わぁ、タックル入ってるオレ!」って思ったんですけど。その後1ラウンドでは1回しかとれなかったんですけど、インタバールの時にアライが「タックル遠い、タックル遠い」って言ってきたんですよ。でも僕には、「タックルとれる、タックルとれる」って聞こえて、「あぁ、タックルとれるよな」って思って。で、「タックルでもとりますか」って(笑)。それでまたタックルをポンポンってとって。で、勝ったと。ホントはもっと打撃をあてようと思ってたんですけど、タックルが炸裂したのは、まぁ、結果オーライで良かったなって(笑)。(自分の)技術的には、ちょっとスピードがないなと。全体的に。自分に欠けてるのはスピードだなって思いましたね。鈍くさいですね。まぁ、これは隠すまでもない自己反省点なんですけど(笑)。

VS長岡戦を観てて「オッ!」って思ったのが、北岡選手ってこんなにタックルが上手かったんだっていうのと、対戦相手を近づけさせないためだと思うのですが、ちょっと横から打つような前蹴り?あれは前蹴りで良いんですよね?
北岡悟:そうですね、横前蹴りみたいな感じですよね。これは私生活で金井一朗(パンクラスism)にきめてる間に上手くなったんですけど。

またなんかこう、イジメっ子キャラになっちゃいますよ(笑)・・・。あれは純粋に相手との距離をとろうとしてたんですか?
北岡悟:距離の確認と、牽制ですよね。あとはまぁ、長岡選手は僕が蹴らないと考えてたと思うんですよ。だから(長岡選手の)脳みその中に、蹴りもあるんだぞっていうのを入れられたら、それでもう良いってことですね。僕が多少パンチをやるっていうのは知ってたと思うんで。で、タックルも距離を詰めてうってくるというのもあったと思うんですけど、そこにもう1個選択肢を入れることによって、(自分が)より試合を進めやすい筈という、試合前の冷静な判断だったんですけど。

わかりました。では、ここからは4月12日(土)後楽園ホール大会のお話を。対戦相手に和田拓也選手が決まりました。和田選手は、昨年11月の横浜大会でパンクラスに初登場し、これまで伊藤崇文選手、大石幸史選手の2選手と対戦しています(1敗1分け)。もともと修斗のリングで活躍していた選手ですが、北岡選手から見た和田選手の印象ってどんな感じでしょうか?
北岡悟:和田選手は、修斗のリングで将来を有望視されてた選手ですよね。パンクラスに上がっている今とは、修斗の頃はスタイルが違いますよね。昔はテイクダウンしてっていうスタイルだったと思うんですよね。でもここ2戦は立ち技をやってきてて、それを軸にして。まぁ、もちろん注目すべき点は根幹のレスリング力だと思うんですけど。あと、修斗の時より『コンバットレスリング』で優勝した時(1999年3月)の印象が強いんですよね。自分がアマチュアの時に何気に出てたコンバットレスリングなんですけど。佐藤ルミナ選手に勝った相手に勝っての優勝ということだったので。和田選手が最も注目を浴びた時だったんじゃないです? その印象がすごく強くて。あとは『コンテンダーズ』で、バリバリのレスラー相手にヒールホールドを極めたのとか、すごい印象に残ってて。まぁ、そっちのルールの方が向いてるんじゃないの?って思いますけど(笑)。

パンクラスではまだ勝ち星に恵まれていませんが、と言って、一本負けもないし、ダウンをとられたということもありません。そのあたりをどうご覧になります?
北岡悟:いや、実力者であることには間違いないですね。さっきも言いましたけど、注目してるのは変則の打撃ではなくて、やっぱレスリング力ですね。伊藤さんや大石との試合を見て思うのは、根幹にある、タックルをきったり、タックルをうったり、相手を組み崩したり、組み崩されなかったりするレスリング力の高い選手ということですね。別に変則の打撃なんて屁でもないですよ(笑)。

そういう和田選手との対戦が決まった時、北岡選手はどんなお気持ちでした?
北岡悟:ん〜実はVS和田戦が決まる前に、僕は対戦を希望していた選手がいたんですけど、会社もその選手にオファーをしてくれたみたいなんですけど、その選手がNGだったんで。それで和田選手になったと思うんですけど、その希望していた選手がNGになった時点で、僕は会社に「強い選手と試合がしたい。その強い選手の中の一人として和田拓也選手と闘いたい」って言ったんです。だから僕の中では強い選手と闘えるということで、(今回の対戦は)競技者としてすごい良いことだと思いますね。

今回の和田選手との試合で、北岡選手は何をやりたいのか? 何を見せたいのか? お話できる中で教えていただけますか?
北岡悟:まぁ、1つは、和田選手はパンクラスに縁がなかったっていうことを、本人に思い知らせてやりたいですね。確か和田選手はパンクラスの入門テストに落ちてたりするんですよね。で、修斗で頑張ったと。僕もパンクラスの入門テストは書類で何気に落ちてるんですけど。まぁ、和田選手はパンクラスに縁もこだわりもなかったと思うんですよね。僕はパンクラスでも小さいんですけど、和田選手よりももっと。でも僕はパンクラスに縁があって、パンクラスの所属選手として今リングで闘うことができてるわけで。結局、和田選手は何の因果かパンクラスにやっては来たわけですけど、でも現実まだ勝ち星がない。強い、良い選手だけど。だから縁がないんですよ。なので、ここでまた負けて、縁がないということがよりわかっていただけるんじゃないかと(笑)。僕はすごいパンクラスにこだわりを持ってやってるんで、そこはもう、絶対、何があっても負けないですね。ミサイルが日本に落ちてきても負けないですよ(笑)。まぁ、そこですよね。あとはまぁ、僕が高く評価しているレスリング力、サブミッションありのレスリングですね。そういう部分で僕がどこまで渡り合えるか? 今の僕がやったらどうなるのか?っていう、ちょっとドキドキ感みたいなところですよね。やられちゃうんじゃないかな? でも、いけるんじゃないかな?みたいな、そういうところが楽しみですよね。あとはまぁ、ルールもパンクラスルールなんで、このルールでの強さっていうのを僕は徐々に身に付けてきていて、勝ち方とかもわかってきてるんで、それもぶつけつつ、みたいな。そういうのは技術的なことになりますね。まぁ、下になるつもりはないって感じですね。

では、今回の試合の先に見据えていることに関してですが、1月の試合前にお話を聞いた時は、「年内にベルト(ウェルター級)を」とおっしゃってましたが、その明確な目標は全くブレてないですか?
北岡悟:ブレてないですね。負けない限りブレないですね。勝ち続ければ勝ち続けるほどって筈なんですけど、まぁいろいろ、なかなか簡単にはいかなさそうな気もしますし。でも、勝ち続ければいいだけの話だと僕は思ってますし。ん〜、今はお客さんのことよりも、とにかく結果って思ってますね。

現在の最大のモチベーションは年内のベルト奪取?
北岡悟:そうですね。モチベーションですね。

では、ちょっと新鮮な話題を絡ませつつということで、北岡選手はパレストラさんで柔術をやってらっしゃったんですが、今年5月に開催される『アブダビ・コンバット』にご興味はないですか?
北岡悟:アブダビですか? アブダビ、興味ありますね。興味ありますけど、今の僕の力で仮にアブダビの本戦に行っても、勝ち上がることは絶対に無理です。それは、そんなに甘いもんじゃないですよね。それくらい、アブダビというか、世界のレベルは高いと思ってるので。そういう状況で行って1回戦で負けるくらいなら、パンクラスで試合をしてた方が良いと思うので。あとは、今、パンクラスのベルトがもう見えてきたので、そっちが大事だと。先にそっちで結果を出してから、まぁ、アブダビは男のロマンということで。2年に一度なら、2年後に行けば良いなかと。だから今年はパンクラスのベルトって決めてるんで。あとは、和田選手と試合をするっていうのが、僕の中ではきちんとした絵なんで、その前に(アブダビの)予選に出るなんてことは考えられないですね。

わかりました。それでは最後に、北岡選手の試合を楽しみにしていらっしゃるファンの皆さんへ。
北岡悟:ん〜、引越ししたんですよね(笑)。引越ししたんで・・・何か、前よりもハングリーになってる感じがすごいするんです。振り返ると、練習生の頃とか、デビューしたばっかりの頃とかより、今の方が全然ハングリーなんで、それは何でなんだろう?って思うんですけど。まぁ、「ちょっと大人になったのかな?オレ」みたいな(笑)感じがしないわけでもないんですけど、「現状に甘んじてないオレ」みたいな。抽象的なものじゃなくて、ちゃんとした革命みたいなことを起こしたいですよね。とりあえず、せめてオレの目の前の、視界だけでも変えてやりたいって思うんですよね。世界は変えれないって思うんですけど、少なくてもオレの目の前だけは世界の色を変えてやりたいって思うんですね。自分が階段を上がれば色が変わるっていうんじゃなくて、自分自身がメガネをかけて色を変えるわけでもなく、むしろ自分の体を使って、世の中の色を塗り替えたいみたいな。もしかしたらその時に自分自身の色も変わってるかもしれないけど。そんな感じで。なんか詩人っぽくないですか?(笑)。


おまけトーク
では、ここでちょっと北岡選手ならではの話題を。パレストラさんでずっと柔術をやってらっしゃった北岡選手だからこそ語れるであろうということで、4/12(土)後楽園ホール大会のメインイベント、ヒカルド・アルメイダVS佐々木有生戦に関してお聞きします。寝技の技術が秀でている選手同士の対戦ですが、北岡選手はこの試合、どういう展開でどちらが勝利すると予想しますか?
北岡悟:え〜、どういう展開? ん〜、佐々木さんの打撃が、どうアルメイダの総合のバランスを崩すか? 単純なグラップリング力で言うと、正直アルメイダ選手の方が上だと思いますが、決め手を与えないだけのことは、凌ぐってことは佐々木さんは十分できると思うんですね。美濃輪さん以上に。致命的なシーンを作らずにディフェンスするってことはできると思うけど、ただ、アルメイダ選手に(佐々木選手の)グラップリングの技が決まるかと言ったら『?』がつくのが正直なところで。まぁ、打撃でいかにアルメイダの総合のバランスを崩せるかということですよね。単純なレスリングでもアルメイダ選手の方が強い気もするし、アルメイダ選手は下(の体勢)を選択してこないような気がするんですよね。上をとってくるような気がする。で、佐々木さんが下になると。アルメイダ選手がパスを狙わずに手堅くいけば、もう普通にアルメイダ選手が上のまま判定勝ちになるというのが予想されますよね。一本決着というのはなかなかないと思いますね。(アルメイダ選手に)一本とらせないだけの力は佐々木さんにはあると思うので。そういう意味では、VSホドリゴ・グレイシー戦(2002年12月・PRIDE24)と非常に似たような展開になると予想できますけど。でも現時点では、単純にホドリゴ選手よりアルメイダ選手の方が強いんじゃないかと僕は見ているので。だからここは手堅くアルメイダ選手の判定勝ちと僕は予想しますね。もちろん佐々木さんには勝ってほしいんですけど、佐々木さんが勝つには、より工夫が必要だと思います。普通に面白くとも何ともない解説でしたね(笑)。



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