●パンクラスを旗揚げして7年間。この世界に入って15年間。これまでの人生の半分をファイターとして生きてきて、振り返って満足してますか。
船木:もう充分ですね。何でかって考えたんですけど、常に勝ちを求められてたじゃないですか。それがおそらく楽しみってものにつながらなかったんだと思います。試合やって、勝って、楽しいなんて思った試合ひとつもないですよ。とりあえずホッとしたってだけですね。俺は、運よくあんまり連敗ってしてないでしょ。負けてもその後、勝ち星が続くってパターンが多かった。「船木は負けちゃいけない男」って言う人もいました。それって、やっぱりつらいですよね。

●そもそもこの世界に入ったのは、「強くなりたい」っていう純粋な欲求があったんじゃないですか。
船木:そうですね。弱かったからでしょうね。弱いっていうか、そういうコンプレックスのある場所にいたんだと思うんですよ。勉強もできなかったし。小学校の時に、腎臓で入院したんですよ。三ヶ月くらいで退院して戻ってきたら、勉強まったく分からなかったです。進学校だったんで、落ちこぼれは何っていうか…。じゃあ、何があるかっていったら、体ですよ。で、体鍛えて。体鍛えてる時っていうのは、自分の世界に入れるんですよ。それがものすごい気持ちがよかった。で、全部そっちのほうにエネルギーを与えて。だから、途中から教科書は必要なかったですよ(笑い)。

●その頃から、これで身を立てていこうって感じでしたか。
船木:これしかないって感じでしたね。

●中学卒業して新日プロ入って、周りはお兄さんっていうか、大人ばっかりじゃないですか。その中で早く大人にならざるを得なかったんじゃないですか。
船木:ああ、大人になりたかったですね。早くハタチにならないかなと思ってました。みんながあまりにも自分に対して子供子供って感じで。要は認められたいってことじゃないですかね。

●どのあたりから満足できるようになりましたか。
船木:えーと、UWFの後半は気持ちよかったですね。勝ちはじめて、そうこうしてるうちにファンが「船木が強い」ってなるじゃないですか。

●その人気が自分にとっての自信になるわけですね。
船木:そうですね。で、もう人気が逆についちゃうと、もうそれで充分っていう。ホントはそこで辞めときゃよかったんでしょうね(笑い)。

●え!?
船木:そこから後は全部プレッシャーになってるわけです。

●うーん。でも、こうやって、これだけの対戦表を見て、自分でよくやったと思いません?満足感っていうか。
船木:「弱くはねえな」って思いますね(笑い)。「弱くはない」それだけですね。

●(笑い)強かったとは思いませんか。
船木:強い…だろうなあって(笑い)。黒(星)のほうが少ないですからね。これ、採点の結果みたいで嬉しいです(笑い)。

●さっき「戦績表を見る機会が多い」って言ってたのは、どういうことですか。
船木:インタビューとかでも出されるし、後、家帰ってからも寝る前とかに。

●へえ。「今までの俺かあ」って?
船木:そうです。

●ま、ありきたりですけど、ベストバウトは?
船木:というか記憶に残った試合ということで。まず、NKの旗揚げ。キース・ベーゼムス、モーリス・スミス、高橋、それから冨宅の試合、それから鈴木の試合。それからルッテンとのタイトルマッチですね。…近藤との試合は、もう一歩ですね(笑い)。

●何ででしょう?
船木:うーん…まだどっかで、認めたくないのかもしれないですね(笑い)。

●そういえば、ベルト取り返した時、ずいぶん冷たく当たりましたね(編注:試合後のあいさつに来た近藤選手に「帰れ!」と一喝)。
船木:ええ。

●あれはワザとですか。
船木:ワザとです(笑い)。やっぱり本当に素晴らしい男になってほしいじゃないですか。いろんな状況を与えてやりたいというか。

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